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年金

2010年5月14日 (金)

年金にも長所はある(はず)【その3】

 これまで年金制度について、世間で話題になっている問題は何か、そしてその問題についてどのように考えたらよいのかを述べてきました(注:ここでいう年金制度とはいわゆる公的年金制度のことで、私的年金は含みません)。支払額と受取額を比較すると年金額は不公平にみえるが、その一方で社会を安定させる役割を持っているので、一方的に不公平と断じてしまうのはよくないというのが私の意見です。

 では年金制度を損得で考えないとして、どのようにこの制度とつき合っていけばよいのでしょうか? 最初から「年金=悪」と考えるのではなく、年金制度をありのままにみると、他にはない長所も見えてきます。今回は、公的年金制度の持つ長所のうち、「一生受け取れる」という点に絞って話を進めることにしましょう。

 さて、年金というのはいつまで受け取ることができるのでしょうか? 公的年金の場合は、生きている限りずっと受け取ることができます。このようなタイプの年金を「終身年金」と呼びます。それに対して、生死にかかわらず一定期間(たとえば10年間)年金が受け取れるタイプの年金が、「確定年金」です。では「終身年金」と「確定年金」のどちらが有利なのでしょうか。
 「終身年金」は生きている間ずっと年金を受け取れるから、期間が決まっている「確定年金」よりよさそうにみえます。数字で確認してみましょう(本来は緻密に計算する必要がありますが、私は専門家ではないので、ざっくりした計算になっていることをお断りします)。

(例1) 65歳のAさん(男性)は、1000万円の資金を年金で受け取りたいと考えています(この資金は公的年金とは別)。「10年確定年金」で受け取る場合、「終身年金」で受け取る場合、それぞれの年金額はいくらか(運用金利は年1%。年金は1年の始まり時に一括で受け取るものとする)。

 実際に計算すると、10年確定年金の年金額は 105.5万円、終身年金の年金額は72.1万円となります(終身年金は65歳の平均余命が15年として計算)。確定年金の合計受取額は、105.5万円×10年=1055万円なので、終身年金で同じ額を受け取るためには、Aさんは15年は生きなければなりません(72.1万円×15年=1081.5万円>1055万円)。つまりAさんが80歳まで生きれば「終身年金」が有利、80歳まで生きられなければ「確定年金」が有利ということです。

 数字の上では、このように有利不利がはっきりします。平均余命(Aさんの場合は15年)より長く生きられるかどうかが分岐点です。ただ、自分が何歳まで生きるかは誰にもわからないし、実際にはそれほど単純に割り切れないものです。次の例でそのことを確認してみましょう。

(例2) (例1)に登場したAさんは、10年間の確定年金を選択しました。その後大きな病気をすることなく7年が過ぎ、Aさんは72歳になりました。仕事をしていないので、収入は公的年金と現在受け取っている年金だけです。貯金が他に1000万円ありますが、3年後には確定年金もなくなるので、心配しています。

 Aさんは3年後どうしているでしょうか? たぶん3年後より前の時点で、お金を使わないようにするはずです(すでにやっているかも知れません)。貯金を取り崩さなくてはいけなくなると不安だからです。公的年金だけで生活し、貯金には手をつけないような生活になるはずです。これではせっかく資産があっても、使えないまま一生を終えることになりそうですね。

 低金利でお金が増えないのであれば、お金を使いたくないいう気持ちはわかります。多くの高齢者がお金を持ったまま使わないのは、減ってしまうことに対する不安があるからなのでしょう。でも、貯金がいくらあっても使えないのは、もったいないと思いませんか。

 こんなとき「終身年金」であれば、気分がだいぶ違います。生きている間は同じ金額を受け取ることができるので、その範囲内で生活すればよいからです。100歳まで長生きしても大丈夫です。少しは貯金も残しておかないといけませんが、少しぐらい使っても年金があるので、それほど心配はいらないはずです。

 公的年金は「終身年金」なので、その部分に関しては、長生きしたときの心配をする必要はありません。これは大きなメリットです。年金は損だなんていわないで、健康に気をつけて長生きを喜ぶようにしたらどうでしょうか。そのほうが精神的にもよいですし。したがって、公的年金で足りない金額についても、「終身年金」で準備するよう心がけます。貯金としておいておくよりも、一生続く「お金の流れ」にするわけです。かっこよくいうと、「ストックからフローへ」ということですね。ただ、いまの日本は低金利なので、若いときから終身年金にこだわる必要はありません。若いうちは運用リスクをとっておいて、歳をとったら終身年金に変更するというパターンがベストです。その方法については、機会を改めて紹介したいと思います(いますぐ知りたいという人は、拙書『預金、やめた。』を読んでください)。

 公的年金にもよいところはあります。それは素直に認めてあげましょう。同じように限界はあります。国の制度だから当然です。社会主義国ではないので、公的年金だけで国民生活すべてをまかなうわけにはいきません。足りないところは自分たちで補うことになりますが、そのときも公的年金の考え方が参考になります。公的年金が終身年金だから、自分も終身年金を確保しようというのは自然な考え方です(注:自助努力の部分は、終身年金以外にも、アパート経営などの選択肢もあります)。

 年金制度を批判している時間があったら、ぜひあなたができることに取り組んでください。そのほうが時間の使い方としても、有効だと思いますよ。


 

 



 
 
 
 

2010年5月10日 (月)

年金にも長所はある(はず)【その2】

 年金制度について述べるとき必ず話題になるのが、「払う額ともらう額の比較」だ。年齢が若いほど、支払う保険料のほうが受け取る年金額より多くなって、不公平だといわれる。現在20歳の男性が60歳まで、ずっと年収500万円だとした場合、84歳まで長生きしないと、支払保険料<年金額にならない(金利はまったく考慮しない)。男性の平均寿命は79歳だから、ほとんどの人は 支払保険料>年金額 となるはずだ。その一方で、いま年金を受け取っている人たちは、たいした保険料を支払っていない。

 この点だけを見ると、誰だって年金制度は不公平だと思う。高齢者の人たちでも、「これからの若い人は大変だ」と考えている人たちはたくさんいる。たしかに公的年金という制度だけをとってみると不公平な気がする。けれども違う視点でみると、必ずしもそうとはいえない。ひとつ例を挙げてみよう。それは公的年金制度があることにより、中年世代は親の経済的な面倒をみなくてすんでいる点だ。年金制度がなければ、中年世代は保険料の負担はなくなるが、親世代の面倒をある程度はみないといけなくなる。両親2人で付き20万円の分の面倒をみるとして、子どもが2人だったら、中年世代の家庭で月10万円の負担をしなくてはならなくなる。これは結構大変だ。親の世話が終わったあとは、自分たちで老後の備えをするか、子どもたちに養ってもらう必要がある。

 親がいない人たちもいるわけで、いろいろなケースがあることは承知しているが、公的年金制度をもう広い目で眺めてみると、必ずしも不公平な制度とはいえない。全体的にみれば、若い世代でも公的年金の恩恵を受けていることは認めたほうがよい。

 年金制度では、支払額と受取額がはっきりとわかるので、両者を比較する議論になりがちである。ただ確認しておくべきことは、年金の最大の目的は社会全体を安定させることであり、ひとりひとりの帳尻を合わせることは優先順位としては低くなる。極端に支払だけが多くなるというようなことでなければ、支払額>受取額 になっても特に問題はないのではなかろうか(計算のいかさまはやめて欲しいが)。税金の見返りが直接どのくらいの恩恵として返ってきているのかはわからないが、税金をなくして警察や消防がなくなるというのは困るはず。同様に公的年金制度をやめて、社会が不安定になるというは誰も望まないと思う。

 「年金は損だ」というような物言いは、もうやめたほうがいいと思う。年金制度を批判することは自由でも、すぐに年金制度をなくしてしまうことはできない(高齢者の数も増え続けている)。日本全体というマクロの問題が解決できなくても、個人の問題が解決すればそれでよいと割り切ったほうがよい。これから年金を受け取る世代は、いまの高齢者がもらっている以上の年金額を受け取ることはない。かといって、年金額がゼロになることもない(たぶん)。その現実のなかで、個人レベルで何ができるのか、それを一生懸命考えたほうが、時間の使い方をしてはよっぽど賢いと思うのだが。
 
 マスコミにあおられて、「年金=損」を合唱していると、若い世代は年金に対する不信感を増してしまう。そうなると今の中年世代が年金を受け取るとき、いまの若い世代は「年寄りはもう知らない」という可能性もある。中年世代は「年金=損」なんて言っちゃいけませんよ。「年金はありがたいから、大切にしようね」とちゃんと教えないと。自分で自分の首をしめちゃいけないでしょ。

 

 

2010年5月 7日 (金)

年金制度にも長所はある(はず) 【その1】

 今年の夏には参議院選挙がある。選挙では「年金」が必ず議題になる(注:ここでいう年金は国民年金や厚生年金などの公的年金制度のこと)。しかし選挙後に何が変わったかといわれると、「う~ん」とうなってしまう。何も変わらないまま、選挙前になるとまたマスコミは年金についてネガティブな報道をする。国民の側にも「年金制度=悪」という思考回路ができてしまったようだ(いま年金を受け取っている人は除く)。

 私個人は日本年金機構(旧社会保険庁)に何の義理もないので、年金制度を擁護する必要はまったくない。でも、このような一方的な議論には疑問を感じる。こういうときはオタク精神を発揮するに限る。悪者の年金制度にもよいところはないか探してみようではないか。どんな人間でも何か長所があるように、年金制度にも長所はあるはず。最初から悪いものだと考えずに、素直な目で年金制度を見つめてみれば、短所とともに長所も発見できるだろう。批判からは何も生まれない。まずはじっくり現状を見つめてみることにしよう。

 考える順番として、①→②→③ としてみた。

① 年金が問題だといわれているが、具体的な問題とはどのようなことか?
② ①で問題とされることは、私たちの生活とどのような関係があるのか?
③ 私たちが行動するにあたって、年金をどのように活用すればよいのか?

 今回は①について考える。いわゆる「年金問題」は、次の4つにまとめることができる。

(a) 年金の掛け金が無駄遣いされている問題(公的資金流用問題)
(b) 年金制度が複雑なため、将来受け取る金額がよくわからないという問題
(c) 年金記録が欠けているため、年金額が少なくなってしまう問題(年金記録問題)
(d) 若い世代にとっては、支払額>受取額になってしまう問題

 結論からいうと、(a)(b)(c)の3つの問題は、すでに解決されているか、もしくは個別問題ということになる。多くの人にとって広く重要な問題は(d)である。
 
 (a)に関していうと、公的資金流用はたしかに大きな問題だ。細かく挙げるときりがないので、興味がある方はこちらを参考にしてほしい。→ http://bit.ly/cmvBYL もちろん不正流用は許せないことである。ただ、もし不正がなかったとしても、年金の財政問題が解決するわけではない。年金制度の本当の問題は、収支のバランスにあるからだ。この問題をきっかけに、マスコミは国民の年金に対する信感を植え付けることに成功した。その反面で、より大きな問題に気づきにくくなったということも事実である。実際、江角マキコが国民年金のポスターに起用されたのに、保険料が不払いだったなんてことでもめている間に、年金の重要法案が議論もなく通過してしまったこともある(2004年)。

 (b)については、平成21年度から「ねんきん定期便」の制度ができたことにより、ほぼ問題は解決されている。従来は59歳になっても受け取る年金額がわからないなんて人が多かった。笑い話ではない。いまから5年前、私が年金ガイドブックなるものを配布していた頃、いちばん問い合わせが多かったのは、50台後半の人たちだった。いまは「ねんきん定期便」により、将来の年金額もある程度わかるので、このようなことはない。年金制度の改革はなかなか進まないが、「ねんきん定期便」が導入されたことはよかったと評価する(年金記録問題を隠そうとしたのではとか、異常に経費がかかったのではとかいう点は、しっくりこないけれど)。
 
 (c)の年金記録問題もマスコミで大きく取り上げられた。たしかに巻き込まれた人にとっては死活問題だ。コンピュータ化されていないときの記録だから、確認しようとしてもほとんど無理だと思う。これは時間がかかっても個別に対応するということしかない。ただこれも(a)の場合と同じく、年金制度の根本的な問題というわけではない。お役人の怠慢や不正にはあきれるばかりだが、年金制度がまたまたマスコミの格好の餌食になってしまった感がある。

 さて残るは(d)の問題だ。現在年金を受け取っている高齢者世代は、掛け金の何倍もの年金を受け取ることができるのに対して、これから年金を受け取る世代(特に中年以降)は、支払額が受取額を上回るケースが多くなる。このことから「年金は損だ」というイメージが生まれ、国民年金保険料を支払わない人が多くなっている(注:厚生年金は給与天引きなので、支払わないわけにはいかない)。そして、このことが年金制度の崩壊につながるのではないかと、マスコミはまた不安をあおる。

 国民年金保険料を支払わない人が多くなったからといって、年金財政に大きな影響はない(参考文献:細野真宏『「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った?』)。それでも、実際に支払額のほうが受取額を上回ってしまう世代がいることは事実であり、時間の経過とともに多数派となる。厚生労働省や旧社会保険庁は、厚生年金保険料のうち自己負担分の部分(負担すべき保険料の2分の1)だけを支払額として受取額と比較し、受け取り学のほうが多くなりますよという姑息な説明をするが、誰もそんな説明にはだまされない。

 この不公平感がある限り、年金制度に対する不信感は払拭されない。だから、きちんと向き合う必要がある。この問題をどのように取り扱えばよいのだろうか、それは【その2】で考えてみることにしたい。

2008年1月 7日 (月)

何が言いたい?日本経済新聞

けさ届いた日本経済新聞に、どどーんと大きな見出しが躍っている。

「基礎年金、全額消費税へ」


「ついに政府も思い切ったか!」と思いつつ、記事をよくながめてみると、(本社研究会報告)とある。な~んだ。日本経済新聞社が独自に「年金制度改革研究会」なるものを作って、外部有識者の意見を聞きながら、報告をまとめただけのことだった。要するに、新聞社の意見を発表するための記事だったのですね。寝ぼけた頭がびっくりしてしまった。

せっかく日経が総力をあげてつくった記事なら、勉強させてもらわなきゃ。
どれどれ、画期的な提案でもあるのかと思って、記事をながめてみると・・・・

・・・・・(無言)・・・・・・・

?????????

日経さんは、さて何が言いたいのだろう?

 ポイントは、「公的年金の基礎年金(定額部分)の財源を、すべて消費税でまかなう」ということのようだ。現在、基礎年金の財源は一部を税金、残りを保険料でまかなっている。自営業者は国民年金の保険料、サラリーマンであれば厚生年金の保険料、公務員であれば共済年金の保険料がこれにあたる。サラリーマンや公務員が支払う保険料は、基礎年金の部分だけでなく、報酬比例部分の年金にもあてられる。

 2009年度の見通しによると、基礎年金の規模は19.4兆円。そのうち保険料負担によるものが12兆円となっている。保険料をもらわない代わりに、消費税を財源にしようというのが、この「年金制度改革研究会」の提案だ。消費税5%分が約12兆円にあたるので、計算があうというわけだ。

 基礎年金の財源が消費税になれば、この部分の保険料負担はなくなる。自営業者は保険料を払う必要がなくなり、サラリーマンや公務員は保険料が引き下げられる。その代わり、消費税はアップする。年金未納の問題は、国民年金加入者(大部分は自営業者)にっかかわるものなので、財源を税金にすることで問題は解決する(消費税を払わないわけにはいかないので)。 保険料方式は原則として勤労者世代にに負担を求めるのに対して、消費税方式は高齢者にも負担を求めることになる。

 財源を税方式にするメリットとして、負担が世代間で公平になること、未納の問題がなくなることが挙げられている。これによって「持続性高め、信頼回復」というわけだ。

 本当にこれだけで年金に対する信頼が回復するのだろうか?

 私も税方式を採用することには賛成だ。現実的な解決策だと思う。ただ、国民が年金制度に対して抱いている不安が、これで解決するとは思わない。

 なぜなら、国民が抱いている不安は「年金制度そのものに対する不安」だからだ。いまの制度を維持したまま、財源を保険料から消費税に換えて、つじつまあわせをしただけでは、ほとんどの国民が納得しないだろう。未納の問題は解決することはたしかだが、消費税5%アップに賛同を得るのは難しい。ただでさえ値上げが話題になっているのに。

 また、この記事にはポッカリ抜けているところがある。厚生年金や共済年金の「報酬比例部分」に関しては、まったく検討されていないのだ。サラリーマンや公務員にとっては、この部分のほうが大きな問題だ。記事によると「この制度設計については具体的に詰めず、今後の検討課題とした」とある。「具体的に詰められなかった」というほうが真相だろう。正直に告白しようよ。

 大きな見出しのわりには、内容がなかった。これで年金に対する信頼が回復すると、本気で考えているのだろうか。政府の提灯持ちになってしまっているのではないかとかんぐりたくもなる。この程度のことなら、大騒ぎすることもないだろう。日経は書く記事がなくて、困っているのだろうか?いま日本経済新聞社に必要なのは、この種の提案をすることではなく、年金問題の本質がどこにあるのかを、読者にわかりやすく解説することだと思う。日経の読者が300万人だとしたら、この記事がわからない読者が270万人以上はいたことだろう。

 日経の記者さんは、ぜひ私の書いた『会社勤めでもできる余裕の年金づくり』(明日香出版社)を参考にしてもらいたい(笑)。ソフトタッチで、いまの年金問題についてわかりやすく解説してあります。この本を読めば、300万人の読者すべてにわかる記事が書けるかもね。

2007年7月11日 (水)

年金問題を整理する

参議院選挙が近づき、3年前に続いて、また年金が大きな争点になっています。

でも、私としては「ちょっと待って」と言いたい気持ちです。年金が争点になるのは結構なことですが、いったい年金の「何を」「どうしよう」としているのでしょうか。社会保険庁はけしからんから、お灸をすえるために自民党には投票するなというムードが高まっていますが、それが本当に重要なことなのでしょうか。

3年前の参議院選挙のことを思い出してみてください。江角マキ子の年金未納から始まり、菅直人氏、小沢一郎氏、小泉純一郎氏などの年金未納がとりざたされたドタバタ劇の結果、自民党は敗北しました。年金はたしかに選挙の争点でしたが、「払った」「払わない」といった小さな話に終始し、年金制度そのものについてきちんと議論されることはありませんでした。

本来じっくりと議論されるべき重要な法案はそっちのけで、瑣末な議論に終始する。それがパターン化しています。煽るマスコミ、それに乗っかる国民、両方に責任があります。結局、得をするのは責任を追求されずにすむ役人たちです。

また同じ間違いを繰り返そうとしているのでしょうか。そうならないためにも、自民党と民主党のマニフェストのうち、年金に関する部分を確認しておくことにしました。

(自民党のマニフェスト)
● 信頼できる年金制度の再構築 ●
誰もが老後に不安を感じないことが、「成長」の原点。
年金記録を徹底調査。すべての被保険者に年金を完全支給
社会保険庁は廃止・解体、労働組合のぬるま湯体質を一掃

(民主党のマニフェスト)
●社会保険庁の解体までに、国の責任で正しい年金記録を作り、あなたの年金を守ります。●約1億人の公的年金加入者に対して、国が責任を持って保険料納付データを届け、国民が直接確認できるようにします。●銀行通帳と同じように、全ての加入者に、全ての納付履歴を記載した「年金通帳」を交付し、いつでも自分の記録を確認できるようにします。●社会保険庁は解体して国税庁に統合し、厳格な管理・運営体制を確立します。●年金保険料は年金給付にしか使いません。●年金制度を一元化して、全ての国民が同じ年金に加入する仕組みに改めます。●行政改革を優先して、税金のムダづかいを徹底的になくすとともに、消費税率は現行のままにして、その全額を年金の財源に充てます。それにより、現行の給付水準を確保します。●年金の基礎(最低保障)部分の財源は全額税で賄い、保険料未納をなくして、確実で安定した制度に改めます。

自民党の主張は、「年金は記録どおり払います」「社会保険庁は解体します」という二つにまとめられます。両方とも当たり前のことです。嘘をついた子どもが、「これからは嘘をつきません」といっているような印象です。

民主党の主張は文字数は多いのですが(笑)、やはり自民党と同じく「年金は記録どおり払います」「社会保険庁は解体します」という主張が先に来ています。その後を読むと「年金制度を一元化する」「消費税を年金の財源にあてる」という主張が出てきます。これは自民党とは異なります。ただし、どのように実行するのかという具体的なプロセスが示されていません。消費税率を5%のままで、年金財政を安定させるというのは選挙対策としてのリップサービスとしか思えません(まあ、本当のことをいうと選挙は苦戦しますからね)。年金債務が数百兆円になるというのに、毎年13兆円の税収で何をしようというのでしょうか。

私が知りたいことは、20年、30年後の年金制度が本当に信頼できるものなのかということです。これは私だけでなく、多くの人が抱いている気持ちです。この問題に答えを出さない限り、今回の選挙が終わっても、3年後の2010年にも年金が争点になるだけのことです。そろそろ膿を出すときがきています。

社会保険庁や安倍首相を悪者にするのはストレス解消になるという話もありますが(笑)、そろそろマンネリ化してきたはずなので、じっくり将来のことを議論するときです。経営コンサルタントの都村長生氏が、年金問題について的確な分析をしています。私とは意見が違うところもありますが、よく整理されています。まずこのあたりから、年金について頭を整理してみるのがよいのではないでしょうか。
→ http://www.choseijyuku.jp/webqa/member/mwqaq101.htm

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2007年7月 2日 (月)

働きながら年金をもらう方法

今日、65歳の男性から電話をいただきました。「会社勤めをしているので、年金がカットされている。カットされた分の年金が戻ってくるかどうかを知りたい。」とのこと。社会保険事務所に電話をしてもつながらないので、私が運営している「年金の不安/撲滅委員会」に助けを求めに来たみたいです。

最初は質問の意味がわかりませんでした。働いている間にもらう年金(在職老齢年金)は、給料が一定額を超えるとカットされるのが常識で、あとで戻ってくるなんて考えてもいなかったからです。質問者はインターネットでいろいろ調べたけれども、どこにも答えが載っていなかったと語っていましたが、それもそのはずでしょう。そもそもカットされた分が戻るなんて、誰も考えないのですから。

この男性はいま65歳だから、60歳~65歳までの5年間にわたって年金がカットされているはずです。将来そのカット分をもらえると思っていたのでしょうか。60歳の時点で、会社から説明を受けなかったのでしょうか。会社から説明がなかったとしたら、その時点で調べなかったのでしょうか。のんきといえばのんき、気の毒といえば気の毒な話です。

彼がいまから5年前、60歳のときにカットされた年金は戻ってこないということを知っていたとしたら、いったいどうすればよかったのでしょうか。

①まず考えられるのは、「カットされるぐらいならいっそ働かない」という選択肢です。十分な年金があれば可能です。ただし、年金が十分な金額でなければ働かなくてはいけません。

②次に考えられるのは、「カットされる金額を小さいしながら働く」という選択肢です。60歳~65歳の間では、年金と給料の合計額が月額28万円以内なら、年金はカットされません。年金が10万円なら、月給(賞与含む)を18万円にすることで、年金は1円もカットされなくてすみます。

③第三の案は、「社員ではないかたちで働く」というものです。たとえば、同じ仕事をするにしても、会社とは「労働契約」ではなく「請負契約」を結びます。ただ、一定の時間に出勤し、定時で帰り、上司の指揮命令を受けるという形態は「請負」ではないので注意が必要です。法人を設立して、法人として会社と業務委託契約を結ぶことも考えられます。いまのところここまでする人はあまりいませんが、一般的になりすぎると役所も規制をかけるはずなので、その点は注意しておく必要があるでしょう。

④最後の案は、いままでとは少し毛色が異なります。年金カットの対象になる収入は、社員としての給料です。逆にいうと、収入が給料でなければカットの対象にはなりません。たとえば不動産収入や株式などの運用によって得た収入は対象にはならないのです。そうだとすれば、資産運用である程度の収入を得るという手が考えられます。資産配分さえきちんと行えば、年5%ぐらいの運用はそれほど難しくありません。退職金などの運用資金が1000万円あれば、それだけで年間50万円の収入アップです。この50万円を得たからといって、年金がカットされることもありません。

60歳を過ぎてからも会社勤めをすると年金をカットするという制度は、時代にあっていない気がします。この仕組みがあるために、バリバリ働ける人が仕事をセーブしている例も見受けられます。制度が人の行動を左右してしまっています。本末転倒です。

制度に左右されずに、働きたければ働く、リタイヤしたいならのんびりリタイアする、そんな工夫をしてみたいものです。

2007年6月26日 (火)

年金は損なのか?

2003年から、『年金ガイドブック』をインターネット上で無料配布しています。最初は薄っぺらい小冊子でしたが、少しずつ書き足した結果、いまでは本一冊分ぐらいの内容になりました(汗)。全国で3000人以上の人にお読みいただいています。

さて、『年金ガイドブック』を読み終えた渡辺さん(仮名・59歳男性)から、こんな感想をいただきました。

《年金のことをこんなにも詰めて勉強したのは初めてです。まさに『年金ガイドブック』のおかげです。ありがとうございました。何をどう考えればいいのか、年金との正しい付き合いかたを教えてもらいました。私にも年老いた両親が田舎で暮らしております。おかげさまで健在ですが、この両親の経済的な面倒を負担に思わないでいられるのも、年金のおかげなんだということに驚きみたいなものを感じました。是非多くの人に薦めたいガイドです。》

(下線は筆者)

渡辺さん、よかったですね。
素直な目で年金を見ることができる人が増えて、私も嬉しいです。

このブログでも何度かお話ししていますが、私は厚生労働省や社会保険庁の味方をするつもりはありません。いまの年金制度が完璧なものだとも思っていません。欠陥の多い制度です。運営もまずいです。

社会保険庁は批判されても当然ですが、だからといって年金制度すべてが悪いというわけではありません。「坊主憎けりゃ、袈裟まで憎い」となってしまうと、「袈裟」がかわいそうですよね(笑)。年金制度に対する先入観をもたずに、素直な目でながめようと思って書いたのが、『年金ガイドブック』です。

渡辺さんの感想に関連するところでは、『年金ガイドブック』49ページにこんな記述があります。
(以下、引用)

コラム 公的年金は「損」なのか

年金の議論をするときに、「払う金額」と「もらう金額」の比較がかならず話題になります。年齢が若いと、「払う金額」のほうが「もらう金額」より多くなって不公平だという議論です。

私も「払う金額」のほうが多くなりそうな世代です。それでも、このことだけをとらえて、公的年金が不公平であるとはいえないと考えています。なぜなら公的年金があるおかげで、親の経済的な面倒をみなくてもよいという面もあるからです。もちろん、このガイドブックを読んでいる人の中にも、親の面倒を見ている人もいるでしょうが、全体としてみれば、若い世代も公的年金の恩恵を受けています。

親の面倒をみないという経済的なメリットがどの程度なのかを具体的に測定することはできませんが、プラスの効果があることは確かです。これと同じような例に、「税金」があります。税金を払うことの見返りに、私たちがどのくらい恩恵を得ているのかはわかりません。それでも、税金をなくしてしまって、警察や消防の仕事もみんな自分達でやるというわけにはいかないでしょう。公的年金も同じように考えればよいのではないでしょうか。

物事にはプラス面とマイナス面があります、「年金=悪」と決め付けてしまうと、プラスの面が見えなくなってしまいます。マイナスの面ばかりを見つめるのではなく、公的年金全体をありのままに受け止めていく態度が必要だと考えます。

もちろん公的年金のすべてを認めようというわけではありません。年金がらみの無駄遣いは徹底的に追求されるべきですし、制度自体も改めるところはたくさんあると思います。バランスのとれた見方をしようというのが、私の意見です。

(引用終わり)

「支払うお金」と「もらうお金」という損得勘定だけでみると、年金は損かもしれません。しかし、自分のいる場所からもうすこし範囲を広げて年金制度をみると、違った見方もできます。危機をあおるマスコミにつられると、いつも不安になってしまいます。一度、落ち着いて年金について考えてみませんか。

『年金ガイドブック』のお申込はこちら→ http://www.nenkin-anshin.com/

2007年6月14日 (木)

年金で抜け落ちている視点

2007年時点で、私は44歳です。年金をもらい始めるのは、21年後の2028年からです(いまのところ)。私が年金として受け取るお金の元をたどれば、2028年に現役で働いている人たちが支払う保険料に行き着きます。私の年金は、自分が支払った保険料からもらうのではなく、若い世代が払う保険料からもらいます。

21年後の現役世代がいまと同じぐらい稼いでくれた上で、きちんと年金の保険料を支払ってくれるのであれば、私の年金は安泰です。もちろん21年後に、日本経済が大きな成長を遂げていて、現役世代の給料が上がっていればいうことはありません。

21年後がどうなるかは誰にもわかりませんが、私はそれほど楽観的には見ていません。中国やインドの台頭によって、付加価値の低い仕事ではお金がもらえなくなっています。21年後にはGDPの規模でも、日本は中国に大差をつけられていることでしょう。これまでの延長線上で考えている限り、日本で働く人の給料が上がっていくという未来を描くことはできません。よくて現状維持といったところでしょう。

現役世代の給料が伸びなければ、集められる保険料も少なくなります。したがって、その分年金は減ります。集めた保険料をパイにたとえてみましょう。年金の議論では、パイをどのように分けるかという「配分」の問題に関心が集まります。いま年金をもらっている人は、支払った保険料に対して年金を多くもらうのに、若い世代では支払う金額のほうがもらう額より多くて不公平だというのは、「配分」が問題になっています。

パイが自然に大きくなっていく状況では「配分」を考えれるだけで十分でした。しかし、パイそのものが小さくなってくるとしたら、「配分」だけ考えるだけではダメです。「配分」を考えることも大切ですが、パイを増やすことのほうがもっと大切です。このような視点が、いまのところすっぽりと抜け落ちています。

パイを増やすため(保険料を増やす)には、保険料を引き上げるという方法があります。しかし、この方法には限界があります。年金だけでなく、消費税や健康保険の負担も上がるでしょうから。残る方法は、①若い世代の人口を増やす、②給料を増やすの2つです(2つともでもよい)。

①の方法には即効性はありません。出生率が急激に改善したとしても、給料をまともに稼ぎ始めるには30年以上かかります。少なくとも、私の年金には貢献してくれません(笑)。もちろん長い目で見れば効果はあります。少子化の問題が年金と結び付けられて議論されますが、今度20年~30年ぐらいに起きることにはあまり関係がありません。出生率がだめなら移民という話になりますが、年金制度を維持するために移民を増やすというのは、そもそもおかしな議論です。

そこで、まじめに考えなくてはいけないのが②の「給料を増やす」という方法です。これは一人一人が勉強して年収を増やしなさいという問題ではなく、「日本全体として稼ぐ力をつける」という問題です。日本全体で生み出すお金を増やすことができれば、そのうちの一部が給料にまわり、年金財政も安定していきます。簡単なことではありませんが、20年後のことを考えれば、最も優先順位が高いテーマです。

安倍首相を初めとして、自民党・民主党などすべての国会議員には、まじめに考えてもらいたい問題です。もちろん私たち自身の課題でもあります。年金の議論からはじまって、どのように日本の未来を描いていくのか、という前向きな方向に議論が進んでいってもらいたいです。根性のある人が出てこないと、無理ですけどね。

http://www.nenkin-anshin.com/

2007年6月13日 (水)

年金は国からもらうものではない

年金の報道をみていると、違和感を感じます。

いま議論されていることは、国の一機関である社会保険庁のずさんな管理体制です。国民の立場からみると、本来もらえるはずの年金が手違いでもらえなくなるのはけしからんということなのでしょう。事務処理をきちんとやるというのは当たり前の話ですから、この点について議論の余地はありません。

問題は、一連の議論が《「国民」対「国」という構図》になっていることです。「年金は国からもらうものなのだから、国はきちんと支払え。」という考え方が前提になっています。国民が払った保険料は国が管理していて、そのお金を後でもらえると考えている人も、少なからずいることでしょう。

「年金=積み立て」というイメージがあるので、公的年金も同じだと考えがちですが、公的年金は積立ではありません。あなたが受け取る年金は、支払った保険料からもらうのではありません。現役世代から集めたお金があなたの年金になるのです。つまり、年金は国からもらうものではなく、若い世代からもらうものなのです。若い世代からもらう権利を得るために、私たちは保険料を払い続けています。

今の議論では、この前提がすっぽり抜け落ちています。私が違和感を感じるのは、まさにその点です。私たちが年金を確実にもらおうとするなら、国にしっかりしろという前にするべきことがあります。それは、自分達より30年若い世代に対して、「年金制度は安心なんだ」ということを納得してもらうことです。いまは全く逆のことをやっています。年金制度を攻撃するばかりで、若い世代の不安が高まっています。その結果、年金制度の屋台骨を揺るがすことにつながりかねません。

それは国がやることだという意見もあるでしょう。たしかにその通りです。でも、国にだけ任せてはおけません。私たちも発想を切り替える必要があります。もちろん嘘はいけません(笑)。根拠がないのに、「年金制度は安心だ」というのは詐欺です。それでも年金制度を攻撃するだけでは、逆効果です。自分で自分の首を絞めているだけです。どうしたら年金制度が安心できるしくみにできるかを考えることは、自分の年金を確保するためにも必要なことです。

3年ごとに不毛な議論に巻き込まれるのは、いい加減やめにしませんか?
このままだと3年後の参議院選挙のときも、同じ議論を見聞きすることになるでしょう。

年金の不安/撲滅委員会 → http://www.nenkin-anshin.com/

2007年6月12日 (火)

年金加入記録を確認してみたところ・・・

社会保険庁が年金記録相談専用のフリーダイヤル(0120・657830)を設置しました。不安を解消するためにはよいことですが、相談が殺到して電話がつながりにくい状態が続いているようです。1件あたり20~30分時間がかかるらしく、24時間体制で対応しても追いつかないことでしょう。夜間はコンピューターが止まっていて、年金記録の照会ができないというのもお役所らしくて笑えます。

電話がダメならインターネットということで、社会保険庁が提供する《年金個人情報サービス》への申込が殺到しています。IDとパスワードをもらえば、24時間いつでも加入記録を確認できます。(http://www.sia.go.jp/sodan/nenkin/simulate/index.htm)。ただし、すぐにIDとパスワードを発行してもらえるわけではありません。まず利用登録をしなくてはいけません。そのとき「基礎年金番号」が必要です。準備しておきましょう。登録した氏名・住所・電話番号などが、社会保険庁で管理している記録と一致すると、IDとパスワードを発行してくれます。申込が多いため、現在、利用登録からID・パスワードの発行には2週間以上かかるとのことです。なお、老齢年金を受給している人、共済組合に加入している人(公務員や教職員)は利用できません。

私はちょうど一年前にIDとパスワードを発行してもらいました。

年金について資料を作っていた関係で、自分の加入記録を知ろうと思ったからです。社会保険事務所に行って確認する方法もあるのですが、面倒くさいですからね。インターネットで申込をすると、しばらくして「社会保険庁社会保険業務センター」から緑色の封筒が届きました。そのときは「ああ、来たか。」という感じでほったからかしにしていましたが(苦笑)、こんなご時世なので、自分の加入記録を確認してみることにしました。

私の場合、3つの会社に勤めて、いまは自営業なので、少しばかり心配していたのですが、加入記録は正確でした。ただ、さっき確認したにもかかわらず、データが5月23日時点になっていて、5月末に支払った国民年金保険料が「未納」と書いてあったのには、ちょっとむかつきましたけどね(笑)。この程度はご愛嬌でしょう。

年金をすでに受給している人は、この手は使えないので、社会保険事務所に行って加入記録を確認するのが確実です。年金を受け取るまでにまだ時間がある人は、このサービスを使ってみるのも良いかも知れません。

とにかく、あわてないことです。5000万件とか1460万件といった数字がひとり歩きしています。マスコミはとにかく話を大きくしようとしているので、注意しましょう。私たちが解決しなくてはいけないのは5000万件ではなく、1件なのですから。

(追伸)この機会に、年金のしくみを知りたいと思った人はいませんか。私が運営している「年金の不安/撲滅委員会」では、年金ガイドブックを無料で進呈しています。わかりやすいと評判です(ちょっと自慢)。

お申込はこちらから→ http://www.nenkin-anshin.com/

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