私のヒーロー
小学校のころのヒーローは、王貞治だった。子ども心にも、あのホームランはインパクトが強かった。ONの2人のうち、大人は長嶋を応援していたが、こどもにとってのヒーローは王選手だった。彼が引退すると聞いたときは、「もう野球を見るのをやめよう」と思った。たぶん、同じような気持ちをもった少年も多かったことだろう。いまでは、とても想像できないことだが、それぐらい王選手の存在は大きかった(イチローが引退するから、野球を見るのをやめるという人は、ほとんどいないはずだ)。
高校生になってバスケットボールを始めてからは、マジック・ジョンソン(ロサンゼルス・レーカーズ)がヒーローだった。200mを超える身長で、あのスピードとテクニックはいまでも信じられないぐらいだ。まさに「マジック」の名前にふさわしい。先日、スポーツ用品店でマジック・ジョンソンのビデオが流れていたので、立ったまま、1時間ビデオを見続けた(笑)。その後、マイケル・ジョーダンというスーパースターが現れたが、個人的にはマジック・ジョンソンがナンバーワンプレイヤーだと思っている。
大学を卒業して、会社に入ってからのヒーローは、経営コンサルタントの大前研一さんだ。いまから20年以上前、丸紅に入社する前に、少しは本を読まなくちゃと思い、大前氏の『新・国富論』を読んだのが彼との最初の出逢いになる。書いてある内容はたぶん半分も理解できなかったが、それでも「この人はただ者ではない」と直感した。シンガポールに長期駐在していたときは、ホテルと隣接するショッピングセンターにある紀伊国屋書店で、大前さんの本を買い込んで、ずっと読んでいた。特に彼が世の中に知られるきっかけとなった『企業参謀』『続・企業参謀』の2つの本には大きな影響を受けた。「考える」とはこういうことなのか、と目からうろこだった。
最初の出逢いから20年たった現在も、彼は私のヒーローであり、師匠だ。直接何かを教えてもらったわけではないが(サインをもらったことはある)、著書やテレビを通して、様々なことを吸収させてもらっている。昨年、私が本を書くことができたのも、大前さんのおかげだと感謝している。
そして、今日、久しぶりに生の大前さんを見ることができた。TBSラジオの「サイエンス・サイトーク」という番組(日曜21時30分~22時)の公開収録を見学することができた。司会の日垣隆さんのメルマガを購読している関係で、おすそわけに預かった。
恥ずかしい話だけれど、涙が出るほど嬉しかった。還暦をすぎたおじいさん(失礼)の話を聞いて、涙が出そうになるというのも変な話だが、大前さんの声に強く心が動かされた(実際には泣きはしなかったけど)。大前さんの日本に対する思いがビシビシと伝わってきて、「俺もがんばろう」と心から思った。
大前研一氏の主張は、著作も多数出版されているので、興味がある人はぜひ読んでもらいたい(ブックオフでも入手可能)。主張が優れているのはもちろんなのだが、私が一番関心するのは、彼の「倫理観」だ。曲がったところがどこにも感じられない、というのが素晴らしい点だ。どうしてあれだけ純粋に生きられるのか。それだけでも大前研一という人間が稀有な存在であることがわかる。
あれだけの能力があれば、世界企業のCEOになることも可能だっただろう(実際にスカウトもあったらしい)。そうであれば数十億~数百億というお金を手に入れることも難しくはない。しかし、彼はそういうことにはまったく興味がないらしく、現在はコツコツと人材育成に力を入れている。ノーベル経済学賞の候補にもあがっていたそうだが、そのような権威に執着するわけでもない。
大げさな話に聞こえるだろうが、大前研一という人間が日本人として生まれたことは、私たち日本人にとって、とても幸運なことだ。そして、ある意味では残された希望のひとつだともいえる。
反対に、日本の不幸は、大前研一という人間を知らない日本人があまりにも多いということだ。地球の裏側のブラジルでも、彼の講演には3000人以上が集まるという。世界でも彼ほどの講演料がもらえる人物は数えるほどしかいない。しかし、そのことを知っている日本人がどれほどいるだろうか。なぜ世界的に高く評価されている大前さんが、日本ではテレビのコメンテーターよりも知られていないのか。これは本当に不幸なことだ。
もしあなたが大前氏の著作を一冊も読んだことがないというなら、だまされたと思ってぜひ読んでほしい。必ず新しい発見がある。大前ファンの人は、ぜひお話しましょう。
それにしても、ヒーローに会えるといういうのは嬉しいことだ。今日は難しい話を抜きに、しばらく幸せな気分に浸りたいです(笑)。
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