年金制度にも長所はある(はず) 【その1】
今年の夏には参議院選挙がある。選挙では「年金」が必ず議題になる(注:ここでいう年金は国民年金や厚生年金などの公的年金制度のこと)。しかし選挙後に何が変わったかといわれると、「う~ん」とうなってしまう。何も変わらないまま、選挙前になるとまたマスコミは年金についてネガティブな報道をする。国民の側にも「年金制度=悪」という思考回路ができてしまったようだ(いま年金を受け取っている人は除く)。
私個人は日本年金機構(旧社会保険庁)に何の義理もないので、年金制度を擁護する必要はまったくない。でも、このような一方的な議論には疑問を感じる。こういうときはオタク精神を発揮するに限る。悪者の年金制度にもよいところはないか探してみようではないか。どんな人間でも何か長所があるように、年金制度にも長所はあるはず。最初から悪いものだと考えずに、素直な目で年金制度を見つめてみれば、短所とともに長所も発見できるだろう。批判からは何も生まれない。まずはじっくり現状を見つめてみることにしよう。
考える順番として、①→②→③ としてみた。
① 年金が問題だといわれているが、具体的な問題とはどのようなことか?
② ①で問題とされることは、私たちの生活とどのような関係があるのか?
③ 私たちが行動するにあたって、年金をどのように活用すればよいのか?
今回は①について考える。いわゆる「年金問題」は、次の4つにまとめることができる。
(a) 年金の掛け金が無駄遣いされている問題(公的資金流用問題)
(b) 年金制度が複雑なため、将来受け取る金額がよくわからないという問題
(c) 年金記録が欠けているため、年金額が少なくなってしまう問題(年金記録問題)
(d) 若い世代にとっては、支払額>受取額になってしまう問題
結論からいうと、(a)(b)(c)の3つの問題は、すでに解決されているか、もしくは個別問題ということになる。多くの人にとって広く重要な問題は(d)である。
(a)に関していうと、公的資金流用はたしかに大きな問題だ。細かく挙げるときりがないので、興味がある方はこちらを参考にしてほしい。→ http://bit.ly/cmvBYL もちろん不正流用は許せないことである。ただ、もし不正がなかったとしても、年金の財政問題が解決するわけではない。年金制度の本当の問題は、収支のバランスにあるからだ。この問題をきっかけに、マスコミは国民の年金に対する信感を植え付けることに成功した。その反面で、より大きな問題に気づきにくくなったということも事実である。実際、江角マキコが国民年金のポスターに起用されたのに、保険料が不払いだったなんてことでもめている間に、年金の重要法案が議論もなく通過してしまったこともある(2004年)。
(b)については、平成21年度から「ねんきん定期便」の制度ができたことにより、ほぼ問題は解決されている。従来は59歳になっても受け取る年金額がわからないなんて人が多かった。笑い話ではない。いまから5年前、私が年金ガイドブックなるものを配布していた頃、いちばん問い合わせが多かったのは、50台後半の人たちだった。いまは「ねんきん定期便」により、将来の年金額もある程度わかるので、このようなことはない。年金制度の改革はなかなか進まないが、「ねんきん定期便」が導入されたことはよかったと評価する(年金記録問題を隠そうとしたのではとか、異常に経費がかかったのではとかいう点は、しっくりこないけれど)。
(c)の年金記録問題もマスコミで大きく取り上げられた。たしかに巻き込まれた人にとっては死活問題だ。コンピュータ化されていないときの記録だから、確認しようとしてもほとんど無理だと思う。これは時間がかかっても個別に対応するということしかない。ただこれも(a)の場合と同じく、年金制度の根本的な問題というわけではない。お役人の怠慢や不正にはあきれるばかりだが、年金制度がまたまたマスコミの格好の餌食になってしまった感がある。
さて残るは(d)の問題だ。現在年金を受け取っている高齢者世代は、掛け金の何倍もの年金を受け取ることができるのに対して、これから年金を受け取る世代(特に中年以降)は、支払額が受取額を上回るケースが多くなる。このことから「年金は損だ」というイメージが生まれ、国民年金保険料を支払わない人が多くなっている(注:厚生年金は給与天引きなので、支払わないわけにはいかない)。そして、このことが年金制度の崩壊につながるのではないかと、マスコミはまた不安をあおる。
国民年金保険料を支払わない人が多くなったからといって、年金財政に大きな影響はない(参考文献:細野真宏『「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った?』)。それでも、実際に支払額のほうが受取額を上回ってしまう世代がいることは事実であり、時間の経過とともに多数派となる。厚生労働省や旧社会保険庁は、厚生年金保険料のうち自己負担分の部分(負担すべき保険料の2分の1)だけを支払額として受取額と比較し、受け取り学のほうが多くなりますよという姑息な説明をするが、誰もそんな説明にはだまされない。
この不公平感がある限り、年金制度に対する不信感は払拭されない。だから、きちんと向き合う必要がある。この問題をどのように取り扱えばよいのだろうか、それは【その2】で考えてみることにしたい。
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