「安く買って、高く売る」
それが資産運用の王道。たしかに誰が見ても、間違いではありませんね。プロ投資家であれば、先物取引を利用することで、まず売っておいて値段が下がってから買い戻すといったことができますが、普通の人にとっては現実的ではありません。個人投資家の場合、やっぱり「買う」ところからスタートするのが自然です。
安いときに買い、高いときに売るというのは、言葉としては簡単なのですが、実践するのは難しいです。リーマンショック後に株価が急落した局面では、安くなった株式を買うチャンスでした。しかし毎日株価が下落し、底が見えないところで株を買うのは勇気が必要です。人間心理として、どうしても弱気になってしまい、もう少し様子を見てからという気持ちが強くなります。ほとんどの場合、そんな風にぐずぐずしている間に株価は反転し、チャンスを逃してしまうことでしょう。いまから考えれば、2009年3月あたりは絶好の買いタイミングでしたが、それはいま(2010年4月)の時点だからいえることで、2009年3月の時点では誰にもわかりませんでした。一定の時間が経過した後、後付けで「あのときがチャンスだった」といっても何の意味もありません。そのときに株を買うという行動ができるという点が重要なのです。
では、どうすれば株が値下がりしているときに買うことができるのでしょうか。その具体的な方法については、拙書『預金、やめた。』(ダイヤモンド社)で詳しく解説したので、ここでは違った視点から考えてみたいと思います。
当たり前のことで恐縮なのですが、株取引には「買い」と「売り」があります。相場の動きとの関係で売り買いをするので、売り買いそれぞれについて2つのパターンにわけることができます。
(買い1)値下がりしているときに買う
(買い2)値上がりしているときに買う
(売り1)値下がりしているときに売る
(売り2)値上がりしているときに売る
買いと売りをセットにすると、以下の4つの組み合わせができあがります。
A 値下がりしているときに買い、値下がりしているときに売る
B 値下がりしているときに買い、値上がりしているときに売る
C 値上がりしているときに買い、値下がりしているときに売る
D 値上がりしているときに買い、値上がりしているときに売る
ここで「値下がり」「値上がり」といっているのは、相場のトレンドのことを指しています。Aの例であれば、それまで1000円の株が800円になったところで売るという意味ではなく、1200円から1000円に値下がりしたトレンドで株を買い、しばらく保有した後、値下がりトレンドの中で売ったという意味です。Aのケースだと必ず損をするかのような印象を受けますが、儲かっていることもあるのでご注意ください。
4つの組み合わせの中では、Bの「値下がりしているときに買い、値上がりしているときに売る」がベストです。まさに王道そのものですね。最悪はCの「値上がりしているときに買い、値下がりしているときに売る」。残ったAとDについてはどちらがいいとは言い難いのですが、Dのように値上がりしているときに買い、そのまま値上がりが続いている中で、株を売ることができれば気分的には最高だと思います。一方で、Aのように値下がりしているときに買うのは勇気がいる行為ですが、値段が下がっているところからスタートしているので、失敗する確率は低いと思います。
理屈上は、B>AまたはD>C というランク付けになりますが、個人投資家が実際にやっているのはCのケースが非常に多いのが現状です。値段が下がっているときにわざわざ株を買うという人は、残念ながらまだまだ少ないと思います。本当はそのほうが成功の確率は高いのだけど。多くの人は、株が値上がりしているときに投資を始め、しばらくいい思いをした後で、出口を見つけられないまま損を抱えることになります。
資産運用に取り組まないと、なかなかお金は増えていかない。しかしその一方で、心理的に「安く買い、高く売る」というのは難しい。このジレンマを解決しないかぎり先には進めません。ひとつの方法としては、何らかの理由で値段が下がっている会社の株を買うというようなことが考えられますが、一個人が価値のある情報を、適法に集めることはなかなかできません。資金と時間に余裕がある人なら別ですが、大多数の人にとっては現実的な方法とはいえないのではないでしょうか。
ではどうすればいいのでしょうか。行き詰ってしまった場合は、考え方をジャンプさせてみましょう。問題は「値下がり」や「値上がり」が予測できないことにあります。それについて予測してしまうから悩みがつのることになるのです。値動きを考える必要はなければ、それに越したことはありません。
したがって、結論はシンプルです。「値動きに関係なく買い、値動きに関係なく売る」 それが答えです。100の資金があったら、全部をいちどに投資するのではなく、10または100に分けて、少しずつ資産を購入する。こうすれば値動きの影響を減らすことができます。「ドルコスト平均法」といわれる方法ですね。従業員持株会などで採用されている方法です。投資信託などでも毎月一定額を買い付けるというしくみがあります。ポイントはルールに基づいて機械的にやること。感情の要素が入ってくると失敗しやすいのでご注意。
ドルコスト平均法については、心ある専門家はみなさん指摘されているので、ご存知の人も多いと思います。しかし、これだけでは物事の半分しか見えていないと思います。資産運用は「買い」と「売り」がセットになっているのですから。ドルコスト平均法は、買うときに値動きの影響を減らすためには有効だけれど、売るときに関しては何も教えてくれません。相場は生き物なので、値動きの影響を減らしたいのであれば、定期的に資産を買うのと同じように、定期的に資産を売るということも覚えておくべきなのではないでしょうか。買うことだけにフォーカスして、売ることはわかりませんというのは、親切ではありません。ドルコスト平均法を使って資産を積み上げていっても、相場が暴落したら、もろに影響をかぶってしまいます。もしそれが自分の退職のときだったりしたら目も当てられません。
この考えを進めていくと、買うときはドルコスト平均法を活用し、使い時には少しずつ現金化していくのがよいということになります。具体的には、確定拠出年金(401K)や変額年金・変額保険のしくみが有効でしょう(ただし商品によっては有効でない場合も多いので、内容はよく確認する必要があります)。これらのしくみは。こつこつと積み立てて、使うときには少しずつ年金というかたちで現金化することができます。うまく活用すれば、相場の影響を受けにくいしくみを作り上げることができるはずです。感情に左右されずに資産運用を続けるには、何らかのしくみが絶対に必要です。
今回は「ドルコスト平均法」の考え方を、売る場合にも活用できることを紹介しました。当たり前のことなのですが、なかなか気づかないかも知れません。参考にしてみてください。ひとつ気になっているのが、この考え方を説明する用語がないこと。「逆・ドルコスト平均法」というのもおかしいので、よいネーミングを思いついた人は、ぜひ教えてくださいね。
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