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2008年11月20日 (木)

投資をやめないための工夫

株価がまた下がっている。こういう状況を見ていると、長期投資とはつくづく難しいと実感する。私のお客様は、今回の金融危機にも冷静に対応しているが、なかにはAさんのように心配になって連絡してくる人もいる。ただAさんの場合でも、値下がりしたときのことを事前に想定して毎月一定額をMRFから株式の投資信託に振り替える方法をとっている。Aさんの資産全体はたしかに目減りしているが、バーゲンセールの株を少しずつ買っているので、将来に対しての準備もできている。

Aさんのように「しくみ」を持って対応している人は少数派だろう。株や投資信託が値上がりしているときに購入し、そのままになっている人がほとんどだと思う。手数料の安いインデックスファンドやETFを使って分散して、長期保有すれば成果が出るということがよく言われてきたが、そんなに単純なものではないということが、今回の金融危機でわかったことだろう。

ちょうど1年前に『これでダメなら投資信託はもうやめなさい』(徳間書店)という本を出版し、長期投資の難しさを指摘した。手数料の安い投資信託を買って分散しただけでは、「感情」をコントロールすることはできないということを知って欲しかったからだ。「感情」の中でも特に重要なのは、「値下がりしたときの感情」だ。人間は損をしたときの痛みを強く感じる傾向がある。元本割れという現実を目の前にすると、冷静に対応することができない。長期保有がよいと頭でわかっていたとしても、我慢するしかないという状況にはなかなか耐えられない。

一度買ってしまった株や投資信託が大きく値下がりしてしまったら、選択肢は「そのまま持ち続ける」と「売る」という2つだけだ。このうち、「売る」という行動はハードルが高い。割り切って「損切り」するのならよい。だが、普通の人にはなかなかできない。値下がりしたものを売ると、「負けた」という気持ちが強く残ってしまうからだ。そこでそのまま持ち続けることになる。いわゆる「塩漬け」だ。「塩漬け」は一見すると長期保有と同じだが、実際にはそうではない。

長期投資の目的は、資産を長期に保有することで、元本よりも資産を(かなり)大きくすることである。しかし、一度「塩漬け」になってしまうと、次の目標は「元本を回復すること」になってしまう。もとの値段に戻ると、「やれやれ」という感じで売ってしまうことになる。たしかに損はしなかったのかも知れないが、これでは投資の意味がない。「塩漬け」という行為(というか何もしていないのだが)は、投資をやめてしまうというのと同じ意味でしかない。

長期投資にとって最大の関門は、「最初に経験する暴落」である。ここで、ほぼ全員がつまずく。以前ブログで書いたように(http://reindeer.cocolog-nifty.com/amenimomakezu/2008/11/post-deba.html)、投資は個人にとっては「不要不急」のものである。だから、個人投資家は損をすると傷ついたまま退場してしまう。個人はいつでも勝負から降りることができるので、結局勝つことができない。「その場から逃げたものは負ける」というのは投資市場というジャングルにおける残酷で当然の「おきて」である。

それでは、個人が投資で成功するにはどうすればよいのだろう?暴落のときでも、投資を続ける方法はあるのだろうか?

ひとつには、冒頭で紹介したAさんのように、一定額の投資信託をずっと買い続けるという方法がある。自動的に投資信託に振り替えるので、買っていることを意識せずにすむ。値下がりしたからといっても続けることは可能だろう。ただ、それでも途中でやめることはできるので、どうしてもやめたくなったときには続けることはできない(もちろんそうなったら、ファイナンシャルプランナーの立場からいろいろな話はする)。となると、究極の選択は「どうしてもやめられない」という状況をつくるのが理想ということになる。こんな方法はあるのだろうか?

考えられる方法は2つある。ひとつが「持ち株会」、もうひとつが「確定拠出年金(日本版401K)」だ。持ち株会は途中でやめるには勇気がいるし、確定拠出年金はそもそも60歳までは現金にすることができない。「やめられない」という点に注目すれば、この2つの方法にはメリットが大きい。

実際、投資家といわれるごく少数の人を除けば、株式投資でうまくいった人は、途中で投資をやめられなかったという人がほとんどである。会社の創業者であったり、持ち株を持たされていたりというケースである。自分の意志で株を買って、そのまま持ち続けてうまくいったなんて人は多くはない。

「途中でやめられない」ことは、普通はデメリットに感じるだろう。しかし、株式のように値動きの激しいものについてはメリットのほうが大きい。いまのようにバーゲンセールで株や外国資産を買うことができるからだ。値段が下がり続けている資産を買うのには勇気がいる。しかし「持ち株会」や「確定拠出年金」であれば、勇気がなくても買うことができる。大切なのは「しくみ」であって、「勇気」ではない。もししばらく使わなくてもよいお金であれば、有効な投資方法だろう。

もちろん注意すべき点もある。「持ち株会」は勤務先の株を買うことになるので、自分の会社の将来に期待できないのなら、薦められない。「確定拠出年金」は加入できる人が限定されているので、すべての人に使えるわけではない。途中で換金できない点も注意が必要だ。「持ち株会」も「確定拠出年金」も活用できないということであれば、生命保険会社が扱っている「変額保険」や「変額年金」を検討してもよい(ただし会社によって商品性やコストが違うので、十分に研究すること)。

いつでもやめられるという自由は、投資に関してはデメリットにもなる(特に個人の場合)。この機会に「途中でやめられないしくみ」を作ってみよう。いまのように投資意欲が下がっているときが、投資をはじめるチャンスなのだから。

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