コンビニ化する銀行(中編)
預金、ローン、投資信託、保険といった主要な金融商品をすべて扱えるようになった銀行は、私たち消費者にどのような影響を与えるのだろうか?「よい影響」「悪い影響」のふたつに分けて考えてみることにする。
〈よい影響〉
銀行の窓口にいけば、投資信託や保険も購入できるというのは便利。これまでは預金は銀行、投資信託は証券会社、保険は保険会社というように、いくつかの金融機関を使い分けなくてはならなかったが、その必要がなくなる。
メリットはこれだけではない。ひとつの窓口でさまざまな金融商品を扱うことによって、これまで以上にニーズにマッチした商品選択ができるようになる可能性もある。
ひとつの例を考えてみる。あなたは「相続」について相談したいと思っている。とりあえず取引のある銀行の窓口で相談してみる。従来であれば、たいした答えは期待できない。銀行では相続に有効な金融商品を扱っていないからだ。あなたが土地持ちの資産家だとしたら、ローンを組んでアパート経営を提案されるのが関の山だろう。
ところが、これからはそうではなくなる。銀行では生命保険も扱っている。生命保険は、相続で大きな問題となる「納税資金」と「遺産分割」にもっとも効果的に対応してくれる。このように、銀行が取り扱う金融商品が増えることによって、よりニーズにあった解決策が期待できる。相続といった特別な案件でなくても、住宅ローンを組んでいる期間中の医療保険といった、誰にでも関係するようなことにもおおいに効果を発揮しそうだ。
〈悪い影響〉
銀行が保険商品全般を扱えるようになった結果、金融業界における存在感はさらに高まった。証券会社や保険会社が扱っている商品は、10年前と大きく変わらない。しかし、銀行は違う。現在の銀行は、預金以外にも投資信託や個人年金といった金融商品も幅広く扱っている。他にもクレジットカード事業や消費者金融もかかえている。消費者相手の金融商品については、個別株やFX取引といった特殊なものを除いて、ほぼ網羅したといえる。証券会社や保険会社にくらべて、銀行(とくにメガバンク)は抜きん出た力を持つようになった。
銀行の強みは、取り扱い商品にとどまらない。最大の強みは、膨大な「個人情報」だ。
あなたの氏名・年齢・住所はもちろんのこと、預金残高まで、銀行は知っている。現在、銀行が投資信託や個人年金の販売を拡大しているのも、預金残高の大きい顧客からアプローチしているからに他ならない。実際、ほとんどすべての銀行で、預金残高の多い客先を優先して、リスク商品(投資信託や変額年金)の販売を行っている。
ほとんどすべての金融商品を扱う銀行が、膨大な個人情報を保有している。
これは何を意味するのだろうか?
消費者とくらべて銀行のほうが圧倒的に有利な関係が生まれたということだ。預金残高だけではなく、入出金の記録からも、あなたの属性を予測することはできる。クレジットカードの情報もあるなら、鬼に金棒だ。インターネットの世界では、あなたが検索エンジンに入力したキーワードに応じて、広告が変わる。それと同じように、あなたの個人情報に基づいて、銀行はあなたに勧める商品を変える。そんなことが起こるのも、遠い先のことではなさそうだ。
どんなことでも、「よい」「悪い」では割り切れない。銀行のコンビニ化によって、消費者には2つの影響が同時並行的に作用するはずだ。しかし、私はどちらかというと、「悪い影響」のほうが強く出ると考えている(続きは次回)。
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