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2007年7月

2007年7月23日 (月)

貴重な「紙切れ」

今日はみなさんに珍しいものをお見せしましょう。

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これがなんだかわかりますか?
知人の家に大切に保管されていたものです。

古いものですが、よく見ると次の内容が読み取れます。

大日本帝国政府
支那事変割引国庫債券

発行日: 昭和14年8月21日
償還期日: 昭和24年10月8日

そうです。戦時中に発行された「割引国債」です。
発行価格は「七圓」(7円)、償還価格は「拾圓」(10円)です。

つまり、約10年で7円が10円になるという国債でした。
とはいっても、戦争のどさくさにまぎれて、この国債は「紙切れ」になりました。
だから、記念として保存されているわけです。
(お金にしてもほとんど価値はありませんから・・・)

よく残しておいてくれたなと思います。
話には聞いていたけれど、実際にその「紙切れ」に出会うことができるとは。
感慨深いです。

現在の日本においても、国債の発行額は膨大な金額になっています。
国債の暴落を声高に叫び、「金」への投資を薦めるような本もあります。

たしかに、いまの日本の財政状態は健全ではありません。
けれども、ひとたび国債が暴落すれば、金融機関はひとたまりもありません。
こんなときには、どんな対策もほとんど意味がありません。
国債暴落を主張する人は、そのことがわかっているのでしょうか?

どんなことがあっても、国債の暴落は避けなければなりません。

私たちにできることは、きちんと政府を監視し、く財政健全化をはかるようにプレッシャーをかけることです。そのために必要な痛みであれば、我慢しなければなりません。参議院選挙できちんと投票することも、その第一歩です。

この「紙切れ」は私たちの教訓として、ずっと残しておくべきです。


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2007年7月20日 (金)

生命保険にニーズはあるのか?

いまから10年以上も前のことです。生命保険会社に転職するにあたって、「ニードセールス」という考え方を教えられました。「ニード」(need)とは、いわゆる「ニーズ」のこと。お客様のニーズに合わせた生命保険を販売しようというのが「ニードセールス」です。

従来の生命保険はパッケージ型が主流でした(いまでもそれほど変わっていないはず)。パッケージ型は、一つの保険でいろいろな保障がついてくるのはメリットです、しかし、必要のない保障があっても取り外しにくいという問題がありました。それに対して、「ニードセールス」では、お客様は必要に応じた保障を手に入れることができるので、無駄な出費を避けることができます。

いま思えば当たり前の話ですが、その当時はたいへん感心しました。従来の生保営業があまりにお客を無視した形態になっていたからです。営業を始めたころは、この「ニードセールス」を金科玉条として、お客様のニーズにあった生命保険をセールスしたものでした。

けれども、セールスを続けていくうちに、ふと疑問を感じるようになってきました。
「お客様のニーズとはいったい何だろう?」と思うようになったのです。

40歳の男性、Aさん、Bさんの二人のケースについて考えてみましょう。二人の家族構成、収入、住宅など、すべての条件はまったく同じとします。「生命保険に対するニーズ」は、AさんBさんとでどのように異なるのでしょうか?

私のいた生命保険会社では、シミュレーションソフトを使って必要保障額を算出していました。求めた必要保障額が「ニーズ」だという考え方です。すると、AさんとBさんのニーズは100%同じということになります。シミュレーションソフトを使って、AさんとBさんの必要保障額を算出すると、数字は完全に一致するからです。

この考え方にあなたは賛成できますか?

10年前の私なら、「そんなもんだろう」と考えて受け入れたと思います。しかし、いまは違います。客観的に「ニーズ」が決まることなどありません。たしかに、計算上は数字が一致します。しかし、その結果と、結果に対してAさん、Bさんがどのように考えるのかとはまったく別の問題です。

二人の必要保障額が3000万円と計算されたとします。Aさんは元気そのものなので、保険なんて自分には必要ないと考えています。Bさんは親が重い病気にかかっているので、保険のありがたさを感じています。このように二人の考え方に違いがあれば、加入する保険はおのずから違ってきます。

客観的にみると同じような保障額が必要だとしても、当事者の考え方の違いによって、導かれる結論は大きく違ってきます。このように考えると、「ニードセールス」とはいったい何なのかという疑問がわいてきます。「ニーズ」とは、客観的に決まるものではなく、むしろお客様の頭の中にあるものです。

「ニーズ」が頭の中にあるものだとしたら、外からの影響を受けて、変化しやすいという特徴を持っています。「自分は絶対3000万円の保険に入らないといけないんだ。」という必要性を感じる人は、ほとんどいないでしょうから。となると、自分の中で納得できる数字が見つかればそれでよいということになります。その数字は5000万円かも知れませんし、もしかしたらゼロかも知れません。

これでは、「ニーズ」(必要性)とはいえません。どちらかというと「ウォンツ」です。「ウォンツ」とは「欲しい!」という感情です。「ニーズ」のように、必要に迫られているわけではありません。たとえば、ベンツを「ニーズ」を理由に買う人はいません(例外的にいるかも知れませんが)。ベンツは「欲しい!」という「ウォンツ」を感じた人が買うものです。

生命保険の場合でも、「ニーズ」というよりは「ウォンツ」の影響が強いと感じます。「欲しい!」という感情をくすぐられると、生命保険もたくさん加入してしまいます。セールスマンの腕の見せ所です(笑)。セールスでよい成績を残している人は、お客様の「ウォンツ」を引き出すことが上手です(なかなか難しいのですけどね)。

生命保険は特別な商品ではありません。「ニーズ」からすれば、携帯電話の買い替えなんてしなくてよいはずです。電話やメールが使えればよいのですから。しかし、新しい機種がでて「ウォンツ」をくすぐられると、やっぱり買ってしまいます。生命保険も携帯電話と同じなんですね。


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2007年7月17日 (火)

最後の生命保険職人

今日、生命保険会社勤務時代の大先輩Sさんに会いました。

Sさんは、週2件以上の契約を今週で890週継続しています(世界記録らしい)。生保業界で知らない人はいないというほどの有名人です。現在は独立されて、自宅を事務所にして保険代理店を営んでいます。

生保時代の年収は数千万。何度も社長賞に輝いています。バブリーな生活をしていると思われがちですが、生活はいたって質素。車の免許を持っていないので、営業は電車とバス。地下鉄1日乗車券を使って、わざわざ遠回りをして営業に向かうという堅実ぶりです。自宅兼事務所にも初めてうかがったのですが、置いてあるものはデルのパソコンとプリンター、そして家庭用ファックスだけ。徹底しています。

メールはほとんど使わず、営業には電話が大活躍。しかもお金がかかるから、自分から携帯電話では電話をかけることはないというツワモノです。決してデジタルとはいえないSさんですが、仕事は緻密そのもの。スケジュール帳には、びっしりとお客様の名前と連絡先が書き込まれ、商談が終わるたびに消しこみをしています。

私が入社したとき、Sさんが同じ営業所にいた関係で、いろいろなことを教えてもらいました。なかでも一番印象的だったのは、「ニーズがないところに保険は売るな!」という言葉でした。契約をもらいたいからといって曲がったことはするな、というのがSさんの信条でした。最初に素晴らしい先輩に出会うことができて、本当によかったと思います。

Sさんほどの実力と知名度があれば、事業をもう少し大きくしても不思議ではありません。しかし、Sさんにはその気はないようです。何から何まで自分でやるのが好きだからです。事務処理も全部自分でやります。それが楽しいのですね。Sさんは、生命保険の職人なんだなと感じました。

通信販売で生命保険に加入できる時代です。今年の12月からは銀行でも生命保険の販売が始まります。職人が活躍する場はだんだん少なくなっていくのでしょう。それでも元気に活躍されているSさんの姿を見て、私もエネルギーをもらうことができました。Sさんにはずっと職人道をまっとうしてもらいたいです。最後の一人になるまで(笑)。

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2007年7月14日 (土)

「振り込め詐欺」と「保険の営業」

テレビを観ていると、「振り込め詐欺」を仕事にしている二人がインタビューされていました。カンニング竹山が、「あなたたちに罪悪感はありますか?」と質問すると、二人とも「罪悪感はある」と答えます。そのうち一人は、「仕事だと思ってやっている。」と付け加えていました。

「振り込め詐欺」は立派な犯罪です。どんな理由をつけたところで、仕事として正当化できるものではありません。ただ、この話を聞いて、少し考えました。自分がやってきた過去の仕事について思い返してみると、彼らの話を他人事だと聞き流せなかったからです。

私は10年以上、生命保険の営業をやってきました。ご存知のとおり、生命保険の営業職は歩合で給料が決まります。契約をとればとるほど給料が上がるしくみになっています。他の会社のことはよく知りませんが、私の勤務していた会社では生命保険の種類によって、手数料が変わっていました。

売る側としては、同じ保険料(掛け金)なら手数料が多い保険を売りたいと考えます。手数料が違っても、販売にかける手間は同じなのですから、その気持ちはよくわかります。しかし、お客様の側からすれば、手数料が少ないほうがよいに決まっています。仕事を始めたばかりの頃は、正直悩みました。少しでも手数料を上げることができないだろうか、なんて姑息なこともよく考えました。「振り込め詐欺」と一緒にはできませんが、「手数料の安い商品を薦めたほうがよかったのかな」といった後ろめたさを感じたこともありました。

結局、自分は仕事として割り切って、手数料の多い商品を売るという選択肢は取れませんでした。不器用な性格です。いろいろ考えてみましたが、ありのままのことをお客様に話すのがいちばん楽だと思いました。だから、最近では、お客様から手数料はいくらかかるのかを尋ねられたら、正直に答えます(尋ねる人はあまりいませんが)。その手数料が高いから契約しないという人なら、どっちみち良い関係を長く続けることはできません。無理に契約をもらっても、後で困るということがよくわかりました。

生命保険もビジネスですから、お客様から手数料をいただくのは当然です。問題は手数料ではなく、手数料以上の価値をお客様に提供したかどうかという点にあります。手数料をはらっても満足してもらえる「付加価値」をどうやってつけるのかということに気づいたとき、いままでの後ろめたさから解放されました。

金融商品だけでなく、販売に携わる人はみなこの問題に直面しています。そのときに、仕事だからといって手数料の高い商品を売り続ける人、本当にお客様の立場にたって正直な気持ちになれる人、どちらが多いのでしょうか。自分が売る側のときは前者の立場でも、買う側の立場になると売り手に後者の立場を要求することもあります。

なかなか難しい問題です。買う側の立場としては、「言われたことを鵜呑みにしない」「よく調べる」「納得できないことにはウンといわない」といった当たり前のことを、きちんと守っていくしかないようです。


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2007年7月13日 (金)

こどもは投資が得意?

高校・大学・社会人とバスケットボールをやり続けてきました。なかなか途中でやめることができませんでした(笑)。不器用ですね。選手を引退した後も、自分の大学や娘の中学校で、学生にバスケットを教えてきました。

大学生と中学生を教えるという経験をした人はあまりいないかも知れません。大学は体育会ですから、経験者がほとんどで、それなりに高度なプレイが要求されます。反対に、中学生はほとんどが未経験者で、ゼロからスタートします。大学生と中学生では、技術レベルはかなり違います。

自分にとって、どちらがやりやすかったかというと、もちろん中学生です。それは中学生のほうが技術的にレベルが低いから教えやすい、という意味ではありません。逆に、基本を教えるのは一番難しいのです。なんといっても、いままでバスケットというものを全くやったことのない子ども達にゼロから教えるのですから。大学生はほとんどが経験者なので、バスケットとは何かを説明する必要もありません。その点では、大学生を教えるほうがずっと楽です。

では、なぜ中学生のほうがやりやすいのでしょう?

それは、中学生には変なクセがついていないからです。彼らはバスケットをした経験がないので、先入観を持つこともないので、私が言ったことを素直に吸収できるのです。反対に大学生の場合は経験が邪魔をして、私の言うことを素直に受け止めることができません。また、いままで築き上げてきたものにプライドを持っていることもあり、自分から変わることが難しいようです。大学生の選手に正しいプレイを教えても、いままで間違ったプレイを身につけていると、すぐにプレイを変えることはできません。まず間違ったプレイを捨てて、それからで正しいプレイを身につけるといった、2段階のプロセスが必要になります。中学生は1つのプロセスでよいので、単純に考えると、大学生のほうが2倍時間がかかるというわけです(実際には、2倍どころではなく、3倍・4倍の時間がかかります)。

投資でも同じことがいえます。投資経験のある人と、まったく投資経験のない人を比べると、経験のない人のほうが正しい方法を身につけるのが早いと感じます。投資経験のある人は、たいてい「どこの会社の株を買うか」「いつ買うか」といったことに関心があります。それはそれで投資の醍醐味です。ただ、運用成果に大きな影響をあたえるのは、個別銘柄の選択や売り買いのタイミングではなく、「資産をどのように配分するか」です。資産配分は運用成果のおよそ80%に影響があるといわれています。つまり、銘柄選びやタイミングはせいぜい20%にしか影響を与えないということです。それなら、資産をどのように配分するかを熱心に考えたほうがよいに決まっています。

投資未経験者にこの話をすると、すんなり受け止めてくれます。また投資を経験した人でも、失敗の経験があり、反省している人は好意的に反応するようです。ところが、投資経験があり、大きな失敗をしていない人にはなかなか受け入れにくいようです。知識も経験もあるのに、もったいないですね。

なまじっか経験や知識があるばかりに、一番難しい個別銘柄から株式投資を始める人がたくさんいます。そのたちは、相場が上がっているときに株を買うケースがほとんどです。相場が上がっているときはいいのですが、落ち込んだらどうするのでしょう。たぶん、そんなときのことは考えていないのでしょうね。

一方、きちんと資産配分をした人は、株の値段が下がっても驚きません。株だけに投資しているわけではないからです。ある程度下がることも予想の範囲なので、値段が下がった株を買って将来の値上がりに備えることもできます。

経験が正しい判断の邪魔をするというなら、投資が一番得意なのは、先入観をもたないこどもたちなのかも知れませんね。

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2007年7月11日 (水)

年金問題を整理する

参議院選挙が近づき、3年前に続いて、また年金が大きな争点になっています。

でも、私としては「ちょっと待って」と言いたい気持ちです。年金が争点になるのは結構なことですが、いったい年金の「何を」「どうしよう」としているのでしょうか。社会保険庁はけしからんから、お灸をすえるために自民党には投票するなというムードが高まっていますが、それが本当に重要なことなのでしょうか。

3年前の参議院選挙のことを思い出してみてください。江角マキ子の年金未納から始まり、菅直人氏、小沢一郎氏、小泉純一郎氏などの年金未納がとりざたされたドタバタ劇の結果、自民党は敗北しました。年金はたしかに選挙の争点でしたが、「払った」「払わない」といった小さな話に終始し、年金制度そのものについてきちんと議論されることはありませんでした。

本来じっくりと議論されるべき重要な法案はそっちのけで、瑣末な議論に終始する。それがパターン化しています。煽るマスコミ、それに乗っかる国民、両方に責任があります。結局、得をするのは責任を追求されずにすむ役人たちです。

また同じ間違いを繰り返そうとしているのでしょうか。そうならないためにも、自民党と民主党のマニフェストのうち、年金に関する部分を確認しておくことにしました。

(自民党のマニフェスト)
● 信頼できる年金制度の再構築 ●
誰もが老後に不安を感じないことが、「成長」の原点。
年金記録を徹底調査。すべての被保険者に年金を完全支給
社会保険庁は廃止・解体、労働組合のぬるま湯体質を一掃

(民主党のマニフェスト)
●社会保険庁の解体までに、国の責任で正しい年金記録を作り、あなたの年金を守ります。●約1億人の公的年金加入者に対して、国が責任を持って保険料納付データを届け、国民が直接確認できるようにします。●銀行通帳と同じように、全ての加入者に、全ての納付履歴を記載した「年金通帳」を交付し、いつでも自分の記録を確認できるようにします。●社会保険庁は解体して国税庁に統合し、厳格な管理・運営体制を確立します。●年金保険料は年金給付にしか使いません。●年金制度を一元化して、全ての国民が同じ年金に加入する仕組みに改めます。●行政改革を優先して、税金のムダづかいを徹底的になくすとともに、消費税率は現行のままにして、その全額を年金の財源に充てます。それにより、現行の給付水準を確保します。●年金の基礎(最低保障)部分の財源は全額税で賄い、保険料未納をなくして、確実で安定した制度に改めます。

自民党の主張は、「年金は記録どおり払います」「社会保険庁は解体します」という二つにまとめられます。両方とも当たり前のことです。嘘をついた子どもが、「これからは嘘をつきません」といっているような印象です。

民主党の主張は文字数は多いのですが(笑)、やはり自民党と同じく「年金は記録どおり払います」「社会保険庁は解体します」という主張が先に来ています。その後を読むと「年金制度を一元化する」「消費税を年金の財源にあてる」という主張が出てきます。これは自民党とは異なります。ただし、どのように実行するのかという具体的なプロセスが示されていません。消費税率を5%のままで、年金財政を安定させるというのは選挙対策としてのリップサービスとしか思えません(まあ、本当のことをいうと選挙は苦戦しますからね)。年金債務が数百兆円になるというのに、毎年13兆円の税収で何をしようというのでしょうか。

私が知りたいことは、20年、30年後の年金制度が本当に信頼できるものなのかということです。これは私だけでなく、多くの人が抱いている気持ちです。この問題に答えを出さない限り、今回の選挙が終わっても、3年後の2010年にも年金が争点になるだけのことです。そろそろ膿を出すときがきています。

社会保険庁や安倍首相を悪者にするのはストレス解消になるという話もありますが(笑)、そろそろマンネリ化してきたはずなので、じっくり将来のことを議論するときです。経営コンサルタントの都村長生氏が、年金問題について的確な分析をしています。私とは意見が違うところもありますが、よく整理されています。まずこのあたりから、年金について頭を整理してみるのがよいのではないでしょうか。
→ http://www.choseijyuku.jp/webqa/member/mwqaq101.htm

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2007年7月10日 (火)

為替で遊ぶ愚かさを知る

本日7月10日付けで、財務省の渡辺氏財務官が退任しました。財務官のポストは「円売り」「ドル買い」など外国為替市場への介入を指揮する権限を持っています。ところが、2004年7月に渡辺氏が財務官に就任してからの3年間、一度も市場介入をしませんでした。前任者が1年半の任期中に35兆円を超える大規模なドル買い介入したのと対象的です。

渡辺氏の在任期間中の、ドル円相場を確認しておきましょう。就任時(2004年7月)の円相場は1ドル=110円近辺でしたが、その後円高が進み、2004年末から2005年初めに1ドル=100円に近づきました。ここで円安基調に反転し、2005年の終わりには1ドル=120円まで持ち直し、現在は1ドル=123円近辺で推移しています。3年間の在任期間中、円安は13円(123円ー110円)、率にすると12%です。2003年の1年で、円が120円から105円まで急騰したことに比べれば、かなり緩やかな変化です。

この安定感をもたらしたのは、渡辺氏の功績といってよいでしょう。

日本の場合、政府も経済界も「円高」を嫌います。輸出の伸びが落ちて、経済に悪影響が出ると考えてしまうからです。そのため円が少し高くなると、円を売ってドルを買うという市場介入をすることが常でした。

ただし、市場介入の効果は逆効果になることが多くなっています。市場介入するということは、「どんな値段でもいいからドルを買う」と宣言したのと同じです。市場の中に、「どんな値段でもいいから買いますよ」というお人よしがいたら、まわりからつけこまれるに決まっています。日本政府以外は、安いドルをどんどん売り、円を買い込むので、ますます「円高」が進んでいきます。

反対に、市場介入をまったくしなければどうなるでしょう。「どんな値段でもいいから買う」という存在がいないので、市場に参加している人間はおっかなびっくりしながら、円やドルを売り買いします。その結果は、落ち着くところに落ち着きます。この3年間まったく市場介入をしないで、「円安」の方向に向かったのは、円の魅力が落ちていることをそのまま反映したものだととらえることができます。

日本以外の先進国では、市場介入することはほとんどありません。市場に参加している人たちが扱う資金の量は、一国の政府が立ち向かうことができないほど大きなものだからです。だから、為替については「ほったらかし」にするのが良いというのが結論です。

狂ったように市場介入を続けた2003年に、大前研一さん(経営コンサルタント)が市場介入する財務省を徹底的に批判し、「ほったらかし」を薦めました。それからしばらく時間を置いて、渡辺氏がやっと大前さんの教えを守ったという形になりました。めでたしめでたしです。これからはよほどのことがない限り、「市場介入」はしないでしょう。「市場介入」という単語がなくなってしまうかもしれません。よいことです。

それにしても、市場介入で積みあがった財務省の外貨準備金が高利回りで運用されているのも、皮肉な話です。本来やらなくてよいはずの市場介入によって買ったドルが、円安と高金利の結果、利益を生んでいるのですから。政府がすすんで外貨で運用しているなら、国民にも国債よりも外貨投資を薦めるべきなのではないでしょうか(笑)。


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2007年7月 9日 (月)

世界を見る視点

日経新聞の「私の履歴書」は、功成し遂げた人物の自慢話といった印象が強すぎて、あまり好きではありません。そんな私ですが、今月は毎日きちんと読んでいます。読売巨人軍終身名誉監督(肩書きが長すぎる)の長嶋茂雄氏が執筆しているからです。

私が小学校5年生のときに長嶋選手は引退しました。私は、全盛期の長嶋は見ていない世代です。私たちのヒーローは王選手でした。ホームランはわかりやすいですからね。正直なところ、子どものころは長嶋選手にはあまり興味はありませんでした。ところが、その後、彼にまつわる伝説を知るにつけ、「この人が日本のプロ野球を支えたんだな。」ということがよく理解できるようになりました。私は読売ファンでもないし、長嶋ファンでもありませんが、スポーツを愛する者として、長嶋茂雄という人物に大いなる尊敬の気持ちをもっています。彼がいなければ、日本のプロ野球がここまでの発展を遂げることはなかったでしょう。

そんな彼が「私の履歴書」を書くことを知り、複雑な心境になりました。あのスーパースターもそろそろ人生を総括する時期にきているということなのでしょうか。ご苦労様という気持ちと、来るときが来たのかという気持ちが交錯します。

7月9日の誌面では、立教大学時代について語っています。私が驚いたのは、彼が大学時代からアメリカの大リーグでプレーしたいという希望を持っていた、ということでした。いまでは大リーグのプレーを毎日テレビで見ることが当たり前ですが、50年以上前の話です。日本ではテレビでさえそれほど普及していない時代なのに、どうやって大リーグの情報を集めていたのでしょうか。情報収集することですら大変な時代に、大リーグでのプレーを希望したというのは、とても想像がつきません。

長嶋氏が大リーグ志向だった理由は、立教大学の砂押監督から薦められたからだそうです。そうだとすると、この砂押監督は相当な人物です。スパルタ練習のため、監督を途中でやめさせられたしまったそうですが、野球を見る目、時代を見る目は確かなものだったといえるでしょう。

日本という国の中で一生懸命やっていると、どうしても日本のことだけに目がいきます。「日本一」という目標を何とかして達成しようとします。しかし、上には上があります。日本一で満足していたらその上はありません。私はなかなかそういう視点で世界を見ることができません。まだまだ修行しなくては。

この話を書いていて、ソニーの創業者である盛田昭夫氏のことを思い出しました。ニューヨークの五番街に店を出したときに、堂々と日章旗を掲げたというエピソードがあります。砂押監督、盛田氏ともに、世界を相手にしていこうという気概をもっていたのでしょう。小さくまとまるのではなく、広い視野で世界を見る必要性を再認識しました。

長嶋茂雄氏の「私の履歴書」、なかなか考えさせられます。野球のことが好きでも嫌いでも、ジャイアンツのことが好きでも嫌いでも、長嶋さんのことが好きでも嫌いでも、一読をお薦めいたします。


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2007年7月 8日 (日)

投資を考える「手順」

生命保険会社のセミナーで講師をしたときのことです。運用成績によって保険金や解約返戻金が変動する「変額保険」に関して、参加している人たちにどのようにファンドを組み合わせているのかをたずねました。参加者は生命保険を何年も販売しているベテランの人たちです。

「変額保険」には、「日本株式」「日本債券」「外国株式」「外国債券」といったファンドが準備されていて、自由に組み合わせることができます(保険会社によっては組み合わせができないこともあります)。ファンドによって運用成績は大きく異なります。だから、どのようなファンドの組み合わせを提案するのかは、販売員の腕の見せ所です。

私のお客様の例を示して、「このような場合に、みなさんならどのような組み合わせを提案しますか?」と質問しました。さて、結果はどうなったでしょう。

→ 見事にバラバラでした(笑)。同じ結果は1組もありませんでした。

お客様の立場で考えてみると、同じ会社の同じ「変額保険」に加入するときに、担当者によってファンドの組み合わせが全く異なるということになります。全体の7~8割は共通していて、残りの2~3割が違うというなら話もわかるのですが、全く違うというのはビックリです。少なくとも会社が同じなら、担当者が違っても、売る商品はある程度共通しているものではないでしょうか。それが「変額保険」の場合はまったく当てはまりません。

これは「変額保険」に限った話ではありません。金融機関が「投資信託」を販売するときもまったく同じことが起こります。同じ金融機関でも、担当者によって売る商品が全く異なるというのはよくある話です。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

それは販売する側の人間が、投資について考える「手順」を知らないからです。「手順」とは一体どんなことでしょう。

「原稿用紙30枚の論文を書く」という課題を、小学一年生に出すことはありません。一年生では、ひらがなと簡単な漢字を習い、短い文章を書くことから始めます。そして、学年が上がるにつれて、難しい漢字を覚え、少しまとまった文章を書く練習をします。このような「手順」を積み重ねて、はじめて長い文章が書けるようになるのです。

投資でも同じことです。何の準備もなく、投資を始めるというのは本来おかしなことです。ただし、投資の場合は準備がなくても始めることができてしまうというのが、文章を書くこととの大きな違いです。投資について何も知らなくても、お金があれば商品を買うことはできます。だから、何も知らない人は、「この商品が良さそうかな」なんて思って、商品選びを始めてしまいます。

残念なことですが、現在の日本では金融商品を販売する側でも、「手順」を知らない人がたくさんいます。その人たちは、好き嫌いや流行という判断基準で商品を選んでいるので、推薦する商品はまちまちになります。その結果、同じ会社にもかかわらず、担当者が違うとまったく違う商品を薦められるということが起こります。

マスコミに登場するFPでも、その発言内容を聞くと、「?」と感じる人がいます。投資の話をするなら、どの投資信託を選ぶという前に、資産配分をどのようにするのかという話を最初にするのが「手順」のはずです。そんな基本的なこともわからない人が多いのは困ったものです。

うまい話に乗る前に、「手順」を意識すると、失敗することは少なくなるはずです。


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2007年7月 7日 (土)

「もったいない」が引き起こす問題

1週間も経つと、家の中にペットボトルが増えてきます。外出したときに買った500ml.のボトルや家で飲んだ2リットルのスポーツドリンクなど、ソフトドリンクの消費量が多くないわが家でもほうっておくとそれなりの量になるものです。今日も出かけたついでに、資源回収の袋にペットボトルを入れてきました。

ペットボトルを出すたびに、いつも複雑な気持ちになります。「なぜ”燃えるゴミ”に出しちゃいけないのだろう?」と思うからです。

ペットボトルはリサイクルするために、分別して回収されていると思われています。しかし、実際のところ樹脂原料にリサイクルされているのは、全体の1割に過ぎません。またペットボトルを樹脂原料にリサイクルするためには、ペットボトル1本をつくるために必要な石油の約3.5倍の石油を必要とします。だから、環境のことを考えれば、ペットボトルはリサイクルせずに、”燃えるゴミ”と一緒に燃やしてしまえばよいのです。(中部大学教授・武田邦彦氏の主張を参考にしました)

ペットボトルをリサイクルするというと、環境によさそうなことをしている気分になります。ところが、実際は環境には悪いことをしていたわけです。飲料メーカーはそのあたりがよくわかっていて、環境に良いイメージを利用して、ペットボトルの生産をどんどん増やしていきました。コンビニに行っても、いまはペットボトルばかりが並んでいます。

「ペットボトルを捨てるのはもったいない」→「だから、もう一度使おう」 という単純な発想が悲劇を生み出しています。もったいないと思うこと自体は良いことなのですが、どうすればより環境に役立つのかという手段が間違っているのです。

これと同じようなことが、金融商品でもあります。一番良い例は、「生命保険」です。生命保険を途中でやめようとすると、販売員から「途中でやめると、もったいないですよ。」と言われることがあります。生命保険の場合、加入してから一定期間(7年~10年程度)が経過する前に、保険を解約するとペナルティを取られることがあります。このペナルティのことを「解約控除」といいます。販売員がいう「もったいない」というのは、解約控除のことだったのです。一定期間が過ぎれば、解約控除はなくなります。だから今の保険を長く続けたほうがよいという理屈です。これは本当でしょうか。

「生命保険を途中でやめると損をする」と思っている人が多いので、この説明に納得してしまう人も多いようです。しかし、もしいま加入している保険が自分にふさわしいものでなければ、その保険を続ける意味はありません。ペットボトルと同じように、目先の「もったいない」という気持ちが、判断をゆがめることになります。解約控除を支払うことになったとしても、解約したほうが多いケースがほとんどです。

「もったいない」という気持ちをゆさぶる解約控除というしくみ、なかなか巧妙です。同じような例として、長期契約を条件に携帯電話を1円(または0円)で手に入れるという取引があります。途中でやめると、ペナルティがあります。解約控除と同じですね。携帯電話だと2年ぐらいでやめられますし、ペナルティもそれほど大きな金額ではありません。でも、生命保険の場合、期間も長いし、ペナルティも大きなものになります。目先の「もったいない」に惑わされないようにしましょう。

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2007年7月 6日 (金)

医療保険の落とし穴

数年前から医療保険のCMが多く見かけます。おかげで医療保険の認知度は上がりましたが、保障内容についてよく知らないまま契約しているケースも目立ちます。CMを見ていると、消費者に誤解を与えるような表現がいまだに使われているので、心が痛みます。しかも、そのCMに出ているのが私の好きな女優さんだったりすると、さらに落ち込みます(涙)。保険会社のCMに出演するタレントには、ぜひ保険の勉強をしてもらいたいものです(よろこんで教えます。笑)。

一般的な医療保険は、「入院」と「手術」を対象としています。「通院」を対象としたものもありますが、この場合の「通院」に、「かぜをひいて病院に通った」というケースは含まれません。病気やケガで入院した結果、保険金の支払いが行われ、さらに同じ理由で通院した場合が、ここでいう「通院」に該当します。「通院」で保険金をもらうには、高いハードルがあります。「通院」に該当すると、通院日数1日あたり数千円の保険金が支払われます。ただし、ずっと支払われるのではなく、入院してから180日以内の通院といった限度があります。また金額の上限も決められています。

「入院」や「手術」に比べると「通院」は軽く見られがちですが、必ずしもそうはいえません。たとえば「胃がん」や「大腸がん」で抗がん剤を飲んでいる人は、毎月の薬代で30万円(!)かかることも珍しくありません。もちろん30万円の全額を負担するわけではありません。自己負担割合が3割とすれば9万円。高額療養費の適用を受ける金額です。所得区分が一般の人の場合だと、このうち毎月44,400円は自己負担しなくてはいけません(高額療養費多数回に該当するため)。1年では532,800円になります。馬鹿にならない金額です。

一般に、抗がん剤を服用する期間は長くなります。個人差もあるのでしょうが、治療期間には何年にも及びます。がんの場合、「入院」や「手術」にかかる費用よりも、「通院」(薬代)にかかる費用のほうが多くなるケースもあります。入院や手術では、一時期にまとめてお金がかかります。一方、薬代は長い期間にわたってお金がかかります。さらに、薬の場合は毎回通院がともなうので、交通費などの負担も含めれば、トータルでは負担もかなり大きな金額になります。

がんの治療に限っては、「入院・手術=お金がかかる」、「飲み薬=お金も手間もかからない」という考え方は改めたほうがよいでしょう。たしかに飲み薬を使うと、日常生活にはプラスですが、お金の面からはそうとはいえません。

加入している医療保険が「通院」を保障してくれたとしても、治療が長期にわたるとしたら、保険金をずっともらい続けることはできません。期間の限度があるからです。単純に医療保険に入れば安心という話ではありません。

従来型の医療保険は、医療現場の変化に追いついていないというのが正直な気持ちです。そろそろ、根本的に医療保険という商品を見直すべきときが来ています。これからもし病気をしたとしても、安心して使える医療保険が求められています。

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2007年7月 4日 (水)

良い金融商品はなぜ売れない?

「カゼをひいたけれども、仕事が忙しくて病院に行く時間がない。」
「仕事帰りに薬屋でカゼ薬を買っていこう。」

そこで、あなたは薬屋の店員に「何か良い薬はありますか?」とたずねます。店員は「これなんかよく効きますよ。」と、カウンターにある薬を置きます。初めて見る薬です。あなたは「店員さんが薦めてくれるのだから、間違いないだろう。」と考えて購入することにします。

よくあるケースです。このカゼ薬は効くのでしょうか?それとも効かないのでしょうか?それはわかりません。ただ一つわかっていることがあります。あなたが買った薬は、薬屋にとって利益の大きい商品だったという事実です(笑)。

薬屋としては、特に商品の指定がなければ、一番儲かる薬を薦めます。これは薬の世界に限らず、商売では当たり前のことです。マグドナルドでソフトドリンクがセットになっているのは、ソフトドリンクが利益率の高い商品だからです。居酒屋がアルコールを薦めるのも同じ理屈です。

これは金融商品でもまったく同じです。金融機関がはじめに薦める商品は、利益率が高い商品であると思って間違いはありません。

たとえば、投資信託に関していえば、コストの安い投資信託としてインデックスファンドがあります。これから投資を始めようという人には、良い商品です。しかし、あなたからリクエストをしない限り、金融機関のほうからインデックスファンドを薦めるということは、まずないでしょう。コストが安いということは、金融機関にとって儲けが少ないということだからです。インデックスファンドはどこで買ってもほぼ同じ運用成績なので、商品に差をつけることができません。そのため高い手数料を取って売ることができません。

逆に、インデックスファンドを薦める金融機関のセールスマンがいたとしたら、その人を信用しても間違いありません。たぶん、そんな人はほとんどいないと思います。インデックスファンドの代わりに、利益率の高い変額年金やアクティブファンドを薦めるのが普通です。

このような状況は残念なことですが、文句を言っても始まりません。薬屋の例でもわかるように、これは商売をする上では、あたり前のことなのですから。買うほうも、よく勉強しておく必要があります。

ただ、現状を肯定してしまうと、良い商品はなかなか売れないことになってしまいます。世の中には結構良い商品が存在しているのですが、儲からないということで積極的に売られていないものもあります。たとえば、「確定拠出年金(個人型)」などは、よい商品です。加入できる人は、自営業者や企業年金のない会社に勤めているサラリーマンに限られますが、加入できる人にとっては確実にメリットのあるしくみです。自営業者などは全員が加入してもよいぐらいです。しかし、現時点での加入者は約8万人という寂しい状況になっています。せっかく良いしくみにもかかわらず、儲けが薄いために、金融機関が販売に力を入れないからです。投資信託を売ったほうが儲かりますからね。

金融機関に文句をいう前に、「確定拠出年金(個人型)」のような良い商品を見つけ出して、活用するほうがよっぽど効果があります。他にも効果のある商品はあるはずです。私も勉強を続けて、役に立つ商品を紹介していこうと思っています。

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2007年7月 2日 (月)

働きながら年金をもらう方法

今日、65歳の男性から電話をいただきました。「会社勤めをしているので、年金がカットされている。カットされた分の年金が戻ってくるかどうかを知りたい。」とのこと。社会保険事務所に電話をしてもつながらないので、私が運営している「年金の不安/撲滅委員会」に助けを求めに来たみたいです。

最初は質問の意味がわかりませんでした。働いている間にもらう年金(在職老齢年金)は、給料が一定額を超えるとカットされるのが常識で、あとで戻ってくるなんて考えてもいなかったからです。質問者はインターネットでいろいろ調べたけれども、どこにも答えが載っていなかったと語っていましたが、それもそのはずでしょう。そもそもカットされた分が戻るなんて、誰も考えないのですから。

この男性はいま65歳だから、60歳~65歳までの5年間にわたって年金がカットされているはずです。将来そのカット分をもらえると思っていたのでしょうか。60歳の時点で、会社から説明を受けなかったのでしょうか。会社から説明がなかったとしたら、その時点で調べなかったのでしょうか。のんきといえばのんき、気の毒といえば気の毒な話です。

彼がいまから5年前、60歳のときにカットされた年金は戻ってこないということを知っていたとしたら、いったいどうすればよかったのでしょうか。

①まず考えられるのは、「カットされるぐらいならいっそ働かない」という選択肢です。十分な年金があれば可能です。ただし、年金が十分な金額でなければ働かなくてはいけません。

②次に考えられるのは、「カットされる金額を小さいしながら働く」という選択肢です。60歳~65歳の間では、年金と給料の合計額が月額28万円以内なら、年金はカットされません。年金が10万円なら、月給(賞与含む)を18万円にすることで、年金は1円もカットされなくてすみます。

③第三の案は、「社員ではないかたちで働く」というものです。たとえば、同じ仕事をするにしても、会社とは「労働契約」ではなく「請負契約」を結びます。ただ、一定の時間に出勤し、定時で帰り、上司の指揮命令を受けるという形態は「請負」ではないので注意が必要です。法人を設立して、法人として会社と業務委託契約を結ぶことも考えられます。いまのところここまでする人はあまりいませんが、一般的になりすぎると役所も規制をかけるはずなので、その点は注意しておく必要があるでしょう。

④最後の案は、いままでとは少し毛色が異なります。年金カットの対象になる収入は、社員としての給料です。逆にいうと、収入が給料でなければカットの対象にはなりません。たとえば不動産収入や株式などの運用によって得た収入は対象にはならないのです。そうだとすれば、資産運用である程度の収入を得るという手が考えられます。資産配分さえきちんと行えば、年5%ぐらいの運用はそれほど難しくありません。退職金などの運用資金が1000万円あれば、それだけで年間50万円の収入アップです。この50万円を得たからといって、年金がカットされることもありません。

60歳を過ぎてからも会社勤めをすると年金をカットするという制度は、時代にあっていない気がします。この仕組みがあるために、バリバリ働ける人が仕事をセーブしている例も見受けられます。制度が人の行動を左右してしまっています。本末転倒です。

制度に左右されずに、働きたければ働く、リタイヤしたいならのんびりリタイアする、そんな工夫をしてみたいものです。

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2007年7月 1日 (日)

医療保険は必要ないのか?

ファイナンシャル・プランナーの内藤眞弓さんが書いた『医療保険は入ってはいけない』(ダイヤモンド社)という本があります。タイトルはいまはやりの脅し系ですが(失礼)、内容はいたって真面目で、よい本だと思います。ことさらに不安を煽る保険会社に警鐘を鳴らし、公的医療保険(健康保険や国民健康保険など)の重要性を再認識させる内容になっています。医療保険への加入を検討している人は、きっと参考になるはずです。

この本はとても良心的な作りになっているので、批判するつもりはさらさらありません。ただ、自分の経験から言わせてもらうと、医療保険に加入したほうがよいのか、加入するとしたらどのくらいの保障額にしたらよいのかという問題は、簡単には結論を出すことはできません。

一般的なサラリーマン家庭であれば、夫婦とも入院日額1万円の医療保険に加入すればほぼ問題はないといえるでしょう(内藤さんの意見では多すぎるようですが)。ただ、ケースによってはそれではとても賄いきれない状況も出てきます。

重い病気にかかっていて、緊急に入院が必要とされるときは、個室に入らないといけないケースもあります。理屈でいえば、このようなケースで差額ベッド代を払う必要はないとされていますが、病院に対してなかなかそんなことはいえません。命がかかっているときは、どんなにお金をかけても何とかしたいというのが、病気にかかった本人と家族の気持ちです。理屈だけでは物事は運びません。

実際に、私のお客様でも重い病気にかかる方がいらっしゃいますが、ご家族の方は必ず手厚い治療を望みます。負担が多くなっても、できるだけのことをしたという「納得感」が欲しいからでしょう。私に関しても、父が病気のときは同じように感じました。

やっかいなのは、実際に重い病気になる確率は低いことです。確率だけを見ていれば、他人事だと思います。ただし実際になってみると、とても他人事ではすませられません。その低い確率のできごとが起きてしまった場合どうするのか。それが問われています。

確率が低いことをことさらに取り上げて、不安を煽り、高額な医療保険に入る必要はありません。しかし、その逆に確率が低いからといって、無視できるわけでもありません。もちろん答えは二者択一(フルカバーの医療保険に加入するかしないか)ではありません。半分だけカバーするという選択肢もあります。

大事なことは、「完璧な答えはないと知ること」です。生命保険については、どんなに考えても100%正しい結論はありません。結局は、最悪の事態が生じたときに、どこまで準備するのかということにつきるのでしょう。本人と家族の「納得感」を満たせるかどうかというのが、生命保険を決める基準です。

正直なところ、なかなか大変なことです。家族が重い病気にかかったという人以外は、そこまで考えているわけではありませんから。逆にあまり考えすぎないほうがよいのかも知れません。私も、こんなことを考えないで保険をするめることができるなら、もっと楽なのにと思います。

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