リバランスは第三の選択肢
昨晩(3月11日)、NHK-BSで放送された「経済最前線」という番組で、リバランスの考え方についてコメントした。そこで今回は、リバランスの考え方についてまとめてみる。
資産運用をする場合は、ひとつの資産に集中するということは少ない。大きく増える可能性もあるが、大きく減らす可能性も高いからだ。そこで通常はいくつかの資産に分けて運用することになる。たとえば、「日本株式25%」「日本債券25%」「外国株式25%」「外国債券25%」という4つの資産に分けた場合を考えてみよう。4つの資産が同じような値動きをすれば、割合はずっと変わらはずだが、長く運用を続けていると、どうしてもパーセンテージが変わってしまう。今回のように株価が暴落した局面では、スタート時に株式の比率が50%(日本株式25%+外国株式25%)だったものが、30%程度(日本株式15%+外国株式15%)しているケースもある。短い時間で、株式の比率が20%も下がってしまったのだ。
このようなときに、資産の割合をもとに戻す行為をリバランスという(正確にはリバランシング)。上の例では、日本株式と外国株式の比率が低下している。ということは、逆からみると、債券の比率は50%から70%に上昇しているということである。そこで、債券の比率を50%に下げて(日本債券25%+外国債券25%)、株式の比率を50%に引き上げる(日本株式25%+外国株式25%)。つまり債券を売り、株式を買うことによって、スタート時の割合に戻すというのが、リバランスである。
株価が暴落している状況では、株式の値段のほうが債券の値段よりも相対的に安いと考えられる。リバランスによって、債券を売り、株式を買うということは、「高いものを売り、安いものを買う」ということなので、合理的な行動である。もしいまの状況でリバランスをしなければ、株式の比率は低いままとなり、将来値上がりのチャンスを逃してしまうことにもなる。自分の感情にまかせると、値上がりしているものを売り、値下がりしているものを買うのは難しい。けれども、リバランスというしくみを使えば、その感情に反する合理的な行動をとることが可能になる。
私はNHKの番組で、次のようなコメントした(多少、補足あり)。
「株式や投資信託のかたちで資産を保有している場合、値下がりに対して選択肢は2つしかない。〈売るか〉〈持ち続けるか〉である。これはどちらとも厳しい。売ってしまうと損が確定してしまうし、持ち続けたとしても将来が明るいとはいえない。」
「すでに持っているものが値下がりするのは嫌なものだが、これから買おうとするものが値下がりするのは大歓迎である。だから、値下がりしたものを買えるようにしておくのが賢い方法である。その意味で、リバランスは『第三の道』といえるものである。」
「値下がりをこわがるのではなく、値下がりを積極的に生かすという考え方がないと、資産運用を続けていくことはできない。なぜなら、資産運用というのは不自然なことをやっているからだ。資産運用に取り組む限り、必ず自分の感情と向き合わなくてはならなくなる。その感情をコントロールするためには、値下がりに対して具体的な行動を準備しておく必要がある。その行動のひとつがリバランスである。」
あなたが荒波の中で船をこいでいるところを想像してほしい。目的地の方角ははっきりとわかっていても、波の中で進んでいる方向がずれてしまうことがある。そのままでは目的地にたどり着くことはできない。だから舵(かじ)を切って、最初に決めた方向に進んでいかなくてはならない。この「舵を切る」という行動がリバランスである。
船のたとえでわかるように、大切なことは、目的地を決めることである。資産運用でいえば、リスク(ぶれ)を決めることである。どのくらいお金を増やしたいのか、そのためにはどのくらいの値下がりを許容できるのか、もし値下がりしたときは具体的にどのように対処するのか、そのようなことを事前に決めておくことが肝心だ。きちんとした計画を持っていれば、厳しい状況でも対応できる。リバランスも冷静に対処するための道具のひとつである。
金融危機だからといって大騒ぎする人は、たぶん目的地があいまいなのだろう。実際にはいろいろとできることがある。いまからでもやり直すことは十分可能だと思うので、ぜひ正しい運用の考え方を学んで、前に進んでいって欲しいと思う。
番組で紹介されなかった詳しい内容については、http://www.office-yen.com を参照してください。
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