生命保険会社のCMから見える裏事情(中)
「生命保険会社は、なぜ効果がよくわからない不思議なCMを大量に流しているのだろう?」
その疑問に答えるために、まず、このようなCMは誰のために流しているのかについて考えてみることにしましょう。
■生命保険会社のCMは「アリバイづくり」である
保険料の安さを強調するCMを流している会社は除いて、生命保険会社のCMは、CMを見た人に行動を促す内容にはなっていません。CMを見て、「保険の内容を見直そうかな」とか、「保険に入ろうかな」なんて思う人は、日本全国を探してもほとんどいないでしょう。もちろん、こんなCMを流したところで、保険の売り上げが上がるなんてことはないと、生命保険会社も自覚しています。もし保険の契約を増やしたいなら、アリコジャパンがやっているように、フリーダイヤルの電話番号やホームページのURLを連呼するはずですから。
だから、生命保険会社のベクトルは外にではなく、内側に向かっていると考えるのが自然です。お客さんに対してメッセージを発信しているというよりも、内輪に向けて「アリバイづくり」をしているのです。「アリバイ」というのは、「私たちはお客さまのために誠心誠意努力していますよ」とか、「家族の愛を形で示す仕事をしているんですよ」というポーズづくりと考えればよいでしょう。
最近では、保険金不払いが話題になり、保険会社に対する風当たりは強くなっています。「保険会社は保険金を払うのが最重要の仕事なのに、払うべき保険金を払わないのは何事だ。」という声が聞こえてきます。たしかに、お客さんのことなんて考えてなかったといわれても仕方がありません。だから、保険会社は世間に対して反省のポーズをとる必要に迫られているのです。
「世間」という言葉を使いましたが、この「世間」の代表が「金融庁」です。金融庁ににらまれると大変です。最悪の場合は、業務停止だってあります。したがって、生命保険会社は十分に反省しているという気持ちを示すために、CMを流しているというわけです。「すべてのお客様を訪問して、保険の内容を確認しています」という活動も、その流れの延長線上にあることがわかります。
生命保険会社のCMは、世間(特に金融庁)に向けての「アリバイづくり」なのです。
■見返りは「減らさないこと」
CMが「アリバイづくり」だとしても、その見返りはなんでしょう。アリバイづくりのためだけに、多額の予算を使うというのは、馬鹿げています。アリバイづくりだけなら、CM以外にも方法はあるでしょうから。生命保険会社もそれなりの見返りがあると考えているからこそ、CMにお金をかけるはずです。では、その「見返り」とはいったい何なのでしょう?
お客さんが増え、収入(保険の掛け金)が増えてくるというのが、いちばんわかりやすい見返りです。ただ、すでに何度も指摘しているように、生命保険会社は売り上げを伸ばそうとはしていません。特に、昔からある伝統的な保険会社(日本生命や第一生命など。漢字生保とか日本社もいう)にその傾向が強いようです。彼らは何を狙っているのでしょうか?
その答えは簡単です。漢字生保は、「新しく増やせなくても、減らさなければよい」と考えています。お客さんが増えなくても、大きく減らさなければ、とりあえずやっていけるからです。これが保険の面白いところでもあり、いやらしいところでもあります。
生命保険の掛け金の払い込み期間は、通常、かなり長期にわたります。20年、30年続けて掛け金を払うというのは珍しいことでありません。一生払い込む(終身タイプ)などというものもあります。保険会社には、途中で契約がなくならないかぎり、長期間にわたってお金が入ってきます。なかなかおいしい商売ですね。
だから、生命保険会社がもっとも怖れることは、すでに契約しているお客さんが保険をやめてしまうことです。それを防ぐために、誠心誠意お客さんのことを思って活動しているというポーズをとる必要があります。この「アリバイづくり」によって、お客さんがこれまで通り契約を続けてくれれば、これからも掛け金が入ってきます。保険会社にとっては厳しい時期ですから、収入が減らないだけでも万々歳です。
つまり、このCMの「見返り」は「お客さんを逃がさないことによる掛け金収入」です。生命保険会社(特に漢字生保)は守りの姿勢に入っています。拡大よりも、現状維持を重視するという傾向が強いのです。
以上、見慣れたCMから、生命保険会社が何を考えているのかがわかりました。これからは、ちょっと違った視点でながめて見るのもよいか知れません。
さて、ここまでで生命保険会社の考え方がわかりました。今度はその知恵を私たちの生活に活用しましょう。生命保険会社が守りの姿勢に入っていることは、私たちの生命保険選びにどのように関係するのでしょうか。たぶん、生命保険のしくみはなかなかよくできていると感心することになると思います(もちろん、皮肉も込められてます)。
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