2008年11月19日 (水)

アマ投資家にとって決定的に重要なこと

資産運用に関して、プロとアマとの違いとは何だろう。ここでは、プロとは「資産運用をお仕事にしている人」、アマとは「本業は別にあり、資産運用がお仕事ではないけれど、資産運用をしている人」として考えてみる。

株式や債券、FXの運用という分野では、アマはプロのやり方を参考にするという図式が一般的だ。運用で成果を出すためには、プロのノウハウやテクニックが役に立つと考えられているからだろう。このことについては、私たちは何も疑問をもたない。

でも、「プロのまねをする」という考え方が本当に正しいのと聞かれて、簡単に「うん」と言ってはいけない。

スポーツを例にとってみる。プロ野球の選手と草野球の選手の違いは、プロの投資家とアマの投資家の違いと同じである。プロ野球選手は「野球をお仕事にしている人」、草野球選手は「本業は別にあり、野球がお仕事ではないけれど、野球をしている人」だ。この両者の違いはどこにあるのだろう。

プロ野球選手は野球が仕事である以上、野球をすることに疑問をはさむ余地はない。「なぜ俺はバットを振るんだろう」とか、「なぜ俺はボールを投げるんだろう」なんて考えているプロ野球選手がいたとしたら、すぐクビだ。彼らは仕事として野球を選んだのだから、野球から逃げられない。

一方、草野球の選手はいつでも野球をやめることができる。気分が乗らないときは練習をサボったって構わないし、忙しいときは休むこともできる。仕事として野球をやっているわけではないので、野球から逃げてしまっても構わない。それでも野球を続けるのは、野球をすることに何か意味(楽しむためとか、健康のためとか)を感じているからだろう。

プロとアマでは、「やっていることに対して意味づけを必要とするかどうか」という点が大きく違う。プロは仕事として野球を選んだ以上、野球でパフォーマンスを向上させる(試合で結果を残す)ということに疑問をはさむ余地はない。疑問を感じたときは、職場を去るときだ。それに対して、アマの場合は、「なぜ野球をやるのか」という意味づけが必要になる。だって、普通のサラリーマンが野球というスポーツを絶対やらなければならないなんてルールはどこにもないからだ。家族との時間を犠牲にして野球をやるのなら、家族に対して「自分が野球をする意味」を説明できなければならない。そうでなければ、家庭崩壊でしょ(経験があるだけに、他人事じゃないけど)。

投資を含む資産運用も野球と同じだと思う。アマにとって資産運用とは「不要不急」のものである。必要でなければやらなくてもよい。プロは置かれた状況が違う。彼らは「儲ける」ということに疑問を持ってはならない。もし疑問をもったとしたら、その瞬間にクビだ。現在は、アマ投資家はプロのやり方をまねすればよいというのが主流なので、ほとんどのアマ投資家は「なぜ儲けるのか?」などと考えたこともない。プロは儲けるためのノウハウやテクニックを伝授してくれるが、「儲けることの意味」を教えてはくれない。それは当たり前のことだろう。だって、プロはそもそも「儲ける」ということに疑問を持ってはいけないのだから。

このようにプロとアマとは置かれた立場がまったく違う。だから、アマが資産運用を続けていくと大きな壁にぶつかる。今回の金融危機のように、資産価値が大きく目減りをすると、アマ投資家は「続けるべきか、やめるべきか」という選択を迫られる。これはプロの投資家にはない心理だ。プロは勝負から降りることはない。株式での運用をやめて債券で運用するといった選択肢はあるだろうが、投資そのものをやめるという選択肢は絶対にない(それは失業を意味するから)。プロにとっては「続ける」ということが大前提なのだ。

アマ投資家の状況はまったく違う。「続ける」ということは前提ではない。そもそも資産運用は「やってもやらなくてもよいもの」なのだから。とはいっても、相場が上昇しているときだけ投資を続けて成果を出すというのは、ほぼ不可能である。成果を出すためには一定期間(かなり長い期間)にわたって、資産運用を続ける必要があるのも事実である。

アマ投資家はやめるという選択ができるために、資産運用を続けるのが難しい。でも、成果を出すには長く続けなくてはならない。プロ投資家は続けるという前提で考え方ができあがっているので、そのやり方をそのまま参考にすることはできない。アマ投資家は、この点で引き裂かれてしまっている。

では、アマ投資家はどうしたらよいのだろうか。

それは「意味」を問いかけることだ。草野球選手が野球を続けていくために「意味」が必要なように、アマ投資家にも「意味」が必要なのだ。

「私はなぜ資産運用をするのだろう?」

この問いかけに答えを出せない限り、アマの投資は絶対に成功しない。仕事でないことをやっている場合には、やっていることの「意味」を自分なりに説明できることが絶対的に重要だ。

では、「資産運用を行う意味」とはどのようなものなのだろうか。私なりに考えていることもあるので、それについては機会を改めて書くことにしましょう。

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2008年11月18日 (火)

金融危機の理由などわからんでいい

今回の金融危機に関して世間で語られていることを目にするたび、「何かが足りない」と感じる。金融危機を「火事」にたとえるなら、「この火事はなぜ起きたのか」「火事はどこまで広がるのか」「いつになったら火は消えるのか」といったことが、話題の中心だ。

火事が起きた理由や、将来の見通しを考えることが重要でないとはいわない。けれども、もっと重要なことがある。実際にまだ火は燃え続けているわけだから、そのことにどう対応するかをまっさきに考えるべきなのではないだろうか。

このブログでは個人に焦点をあてて書いている。だから、ここでの課題は、「個人としてこの金融危機にどのように対処すればよいのか」という質問に答えを出すことだ。 

今回の資産下落の程度は、歴史的に見てもたしかに大きなものだといえる。ただ、規模の大小はあっても、不動産価格の下落や、株安・円高などは何度も起きていることで、特別なことではない。不動産にしても株にしても、上がるときもあれば、下がることもある。値下がりした資産も時間がたてば元に戻るだろう(どのくらいの時間が必要かはわからないけど)。そして、またバブルが生まれ、はじける。

 結局のところ、同じことの繰り返しにすぎない。時間が経過すれば、火事はまた起きる。そのとき気をつけないといけないことがある。それは、次の火事はこれまでとは違う原因で発生するということだ。過去に起きた火事の原因を調査することは、同じ火事を二度起こさないためには絶対に必要なことだ。しかし、次の火事を防ぐことはできない。同じように、次の火事がどのようなかたちで起きるかを完全な予想するのも、不可能である。今回の金融危機に本当の意味で気づいていた人は、ほとんどいなかったのだから(あとづけの解説はいくらでもあるけど)。

 では、専門家でもない私たちは、いま起きている火事(金融危機)やこれから起きる火事に、どのように対処すればよいのだろうか?

 答えはそれほど難しくない。「もともと火事は起きるもの」と考えて準備しておく。それだけのこと。火事はもともと避けられないと思っていれば、事前に火事になったときの準備をするのが普通だろう。延焼しにくい素材で家を作ったり、消火のための水を準備したり、避難訓練をすることで準備しておけばよい。さまざまな原因で火事は発生するだろうが、その現象はすべて「ものが燃える」という形で発生する。その現象にうまく対応さえすればよいのだ。

 金融危機にしても同じように考える。危機の原因はいろいろだが、投資家にとっての現象としては必ず「資産の下落」というかたちをとる。日本の投資家からすれば、「株安」「円高」「不動産安」という現象だ。だから、資産価格が下落したら、それにすばやく対応できるようにする準備をしておけばよい。自分が持っている資産が下落しているときに、「なぜ下落しているんだ」などと考えていても、意味がない。大切なことは、変化(特に自分にとって良くない変化)にすばやく対応することだ。

 変化に対応するためには「しくみ」が必要だ。感性はあまりあてにしないほうがいい。人の心は周囲に左右されやすい。それよりも、資産価格が下落したときにでも、冷静に買い付けができるようなシステムを作ってしまうほうがよい。その意味で、「持ち株会」や「確定拠出年金」などはよいしくみである。ただしこのしくみは月払いしか対応できないので、まとまった資金を運用するときには、私のクライアントが採用しているように、コストの安い「変額年金」を活用するのもよい(具体的な方法は拙書『これでダメなら投資信託はもうやめなさい』を参照のこと)。

 危機の理由などは、あとからいくらでも説明がつく。これから起きる危機を予想しようとしても、人の予測などあてにはならない。現象が起きたときにすばやく対応できるような「しくみ」を準備することのほうが、理由の解説や今後の予測に時間をかけるよりも、ずっと有効だろう。これは金融危機だけでなく、生活全般に関して必要な「知恵」だと思う。

 なぜ、こんな当たり前のことを誰も指摘しないのだろう?

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2008年8月27日 (水)

長嶋さんは株式投資がお好き?

 北京オリンピックも終わり、ようやく静かになってきました。日本選手が活躍してくれるのは嬉しいけれど、「他の国は全部敵」みたいな報道のされ方は好きではありません。シンクロナイズドスイミングの井村コーチは、中国チームでとてもいい仕事をしましたが、なぜ賞賛の声が上がらないのでしょう(スペインチームのコーチも日本人の方だそうです)。言葉を含めて、環境の違う場所できちんと評価を出したということは、素晴らしいことです。日の丸をポールに掲げることにはつながりませんが、私は同じ日本人として誇りに思います。フェンシング銀メダルの太田選手を指導した、オレグ・マツェイチュクコーチ(ウクライナ出身)も同じように賞賛したいです。なぜ、そんなに国籍にこだわるのでしょうか。しかも、選手の国籍ばかりに(コーチは外国籍でもいいところが不思議)。

 メダルを取ったか取らないかにかかわらず、選手は全員頑張りました。お疲れさま。気の毒なのは、野球の日本代表ですね。結果が出ないとボロクソ言われます。冷静に見て、今回、日本チームがメダルを取れなかったのは「当然」の結果です。米国の男子バスケットと比較すれば、その理由はすぐにわかります。選手の能力はダントツの米国でも、アテネ五輪では3位に終わりました。その反省を込めて、NBAプレイヤーがそれこそ死に物狂いで金メダルを奪回しにきました。にもかかわらず、簡単には勝たせてもらえません。ギリギリの勝利でした。世界で勝つのがどれほど大変かわかります。星野監督にも責任はあると思うけど、もっと根本的な問題がありますね。本当に勝ちたいなら、女子のソフトボールぐらいやらないと。

 さて、オリンピックの話が出たところで、今回はスポーツと資産運用の関係について、考えてみることにしましょう。「スポーツと資産運用にどんな関係があるの?」なんて、ツッコミはいれないでね。真面目な話です。

 昔、落合さん(現・中日監督)が、長嶋さん(もと巨人監督)についてこう語っていた。「長嶋さんの野球は、実際に一緒にやってみないとわからない。彼は、全部の試合に勝とうとしていた。ファンを喜ばせてあげたいから。捨て試合というのはないんだ。」 なるほど、ファンのことを大切に思う長嶋さんらしい話です。ファンの立場からみれば嬉しいことですね。
 ただ、現実問題として、どんなにすごいチームでもすべての試合に勝つことはできません。ペナントレースが144試合あったとして、144勝0敗というわけにはいきません。全勝を狙って最初から飛ばしてしまったら、すぐに選手が息切れしてしまいます。それに、優勝を狙うなら全勝する必要などありません。優勝ラインはだいたい6割ですから、144試合あれば60試合近く負けることができます。全勝を狙うのではなく、「60試合負けてもいいんだ」と考えるのが監督らしい考え方です(もちろん、落合監督はそう考えています)。
 この「監督の考え方」と正反対なのが、「ファンの考え方」です。野球でもサッカーでも熱心なファンは、ひいきのチームには全勝してもらいたいと考えています、ひとつでも負けることは許されません。
 
 私たちは、普段、監督の立場になることはありません。だから、監督の気持ちを理解できないのが実情です。試合に負けると、監督はファンからは批判を受けます。采配のミスが原因だったりすると、批判はどうしても手厳しくなります。でも、グッとこらえて最後まで戦いつづけなくてはなりません。私も監督のつらさはなかなかわかりませんでした。大学でバスケットボールの監督をやることになって、はじめてそのつらさがわかりました。

 資産運用をするときに参考になるのは、この「監督の考え方」です。目先の勝敗に一喜一憂することなく、6割の勝率を目指していくことが大切です。株式投資で6割成功できれば、上出来です。
 しかし、投資をしたことがないと、元本割れをおそれるあまり、勝負を避けてしまいます。スポーツでいえば、「負けるのが嫌だから、試合にでない」というようなものです。これではいつまでも勝つことはできません。スポーツに勝ち負けがつきもののように、資産運用にも上がり下がりがつきものです。最初から全勝を目指そうというのが、そもそもの間違いです。少し負けてもいいから、全体として勝つという発想がどうしても必要です。

 この「監督の考え方」を実行するには、どうしたらよいでしょう。大切なことは、「数多く試合をすること」と「勝つ確率を高めること」という2点です。勝率6割をめざすにしても、試合数が1というのでは話になりません。0.6勝というのはありませんから。やはり数をこなさないといけません。ただし、個人が多くの株式を保有することは現実的に難しいので、投資信託を活用することになります。また、勝つ確率を高めるためには、インデックスファンドまたはETFを活用するのが無難です。必ず儲かるとはいえませんが、平均的な運用よりはよい成績を残せます。長い目で見れば、勝つ確率の高い方法といえます。

 「監督の考え」で資産運用に取り組むと、いままで見えていなかったことが見えてきます。優秀な監督は、長丁場を乗り切るために、リーグ戦の途中で新しい作戦を試したり、新しい選手に機会を与えます。試合に負けてしまうかもしれませんが、長い目で見れば、チームを成長させることにつながります。この挑戦が実を結ぶときがくるかも知れません。反対に、メンバーを固定していると、チームはなかなか成長していきません。良い監督と悪い監督の分かれ目は、挑戦をしているかしていないかで判断することができます。

 資産運用も長く続けていると、挑戦することができます。全部勝とうと思っていないから、余裕があります。最後に笑えばよいのです。だから、株式市場が低迷して、誰も株を買わないようなときに株を買っておこうかと思うこともできます(もちろん購入資金を準備しておく必要はありますが)。反対に、株式市場が好調で、みんな株を買おうとするときには冷静に売ることができます。ほとんどの人は短期売買に目を奪われているので、他人と違ったことをすることによって、成果を出すことができるのです。

 あとは、具体的にどういうしくみを選択するかだけの問題です。具体的なしくみについては、私の著書《会社勤めでもできる余裕の年金づくり》(明日香出版)や《これでダメなら投資信託はもうやめなさい》(徳間書店)で詳しく紹介しています。興味がある人は読んでみてください。ひとつのしくみに複数の役割をもたせるというところがポイントです。

 ところで、長嶋監督が資産運用したら、どういう結果が出るのでしょうか?(資産運用しているかどうかは知りませんが) 全勝を狙っていったら、たぶん失敗しちゃうでしょうね。でも、案外「動物的カン」で、大儲けしていたりして。いずれにしても、私のような凡人の基準で測れる人ではありません。

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2008年8月26日 (火)

金融商品だって、「自然」がいいに決まってる!

■この商品のしくみがわかって買っている人、何人いるのかな?
 
 仕事柄、金融機関のパンフレットを手に取ることが多くなります。最近、M銀行で「円/豪ドル・デュアル・カレンシー債券(期限前償還条項付)」というパンフレットをもらいました。これは、ノルウェー地方金融公社という格付けの高い期間が発行する債券で、次のような特徴を持っています(以下、パンフレットに記載されている内容を引用)。

・円建て年2.50%(税引後年2.00%)の固定金利(期間約3年/年2回利払い)
・お申込代金・利息は「円」
・為替水準により、満期償還日前に「円」に償還(期限前償還条項付~最短の場合、約半年で期限前償還)
・満期償還時は、為替水準により「円」または「豪ドル」で償還(一定範囲の円高までは為替変動リスクを軽減)※豪ドル償還の場合、その円換算額は投資元本を大きく下回る可能性が高いと考えれられます。←(注:※以下は小さい表示)

 これだと何のことかわからないので、パンフレットにある図に基づいて、もう少し具体的に確認しましょう。この債券は申し込み単位が、「500万円以上100万円単位」となっているので、500万円で購入した場合を例に考えます。まず、2008年9月11日に500万円を払い込み、そのときに「当初為替レート」が決定されます。パンフレットの例では、当初為替レートは「1豪ドル=98円」となっています。満期償還日は、2008年9月8日までなので、期間は約3年となりますが、為替の動きによって、以下の3つのケースに分かれます。

〈ケース1〉途中で償還されるケース 
 半年ごとの「期限前償還判定日」に、1豪ドルが98円以上の「円安・豪ドル高」になっていた場合(たとえば、1豪ドル=105円)には、額面金額が円で戻ってきます。半年後の2009年3月に、1豪ドル=105円になっていた場合、500万円が戻ってきます。そのときに、半年分の利息10万円(500万円×2.00%)ももらえるので、合計金額は510万円です。この場合、その先の利息はもらえません。

〈ケース2〉「円」で満期に償還されるケース
 半年ごとの「期限前償還判定日」に一度も「円安・豪ドル高」(1豪ドル>98円)にならず、満期償還日の10営業日前に、「償還通貨判定レート」(ここでは1豪ドル=83円)よりも「円安・豪ドル高」の場合には、満期償還日に額面金額が戻ってきます。利息は6回もらえるので、合計約60万円となり、元本と合わせて、3年後の受け取り金額は560万円です。

〈ケース3〉「豪ドル」で満期に償還されるケース
 〈ケース1〉〈ケース2〉のどちらにもあてはまらない場合、つまり半年ごとの判定日に、1豪ドル=98円以上の「円安・豪ドル高」にならず、満期償還日の10日前に1豪ドル=83円よりも「円高・豪ドル安」(たとえば、1豪ドル=75円)になった場合、豪ドルで戻ってきます。このときの豪ドルは、当初為替レート(例では、1豪ドル=98円)で計算されるので、500万円=51,020豪ドル(1豪ドル=98円)となります。償還時に、1豪ドルが75円になっていたら、51,020豪ドル×75円=3,826,500円 の価値で戻ってくることになり、途中の利息60万円を足しても、4,426,500円にしかなりません。大幅な元本割れです。

 さて、この商品をどう評価したらよいのでしょうか?

■加工食品は体に悪い

 M銀行としては、金利が高いこと(税引き前2.5%)を売り物にしたいと思って、この商品を開発したのでしょう。ただ、いまの日本で、2.5%の金利を単純に提供することはできません。そこで「豪ドル」を組み合わせることにしました。しかも、多少円高が進んだとしても、心配しなくてすむようなしかけをつけて。為替リスクについて、パンフレットには、このように書いてあります。

「為替変動リスクの軽減」
 償還通貨判定為替レートが、当初為替レートより10~20円/豪ドル(仮条件)の円高水準に設定されることにより、当該償還通貨判定為替レートまでの円高、豪ドル安であれば、額面金額(円)で償還されます。これにより、通常の外貨建債券とくらべると、為替リスクが軽減されています。

 要するに、現在の水準が「1豪ドル=98円」のとき、3年後に「1豪ドル=83円」の円高・豪ドル安なんて、なかなかなるもんじゃないから、それほど心配しなくていいですよ、と言いたいみたいですね(でも、パンフレットのグラフをみると、1998年から2008年の10年間で、1豪ドルが83円よりも円高のケースが半分くらいあるのだけど。円安・豪ドル高は最近の現象みたいですが、大丈夫なのかしら?)

 3年後に1豪ドルが83円より円高にならなければ、その間高い金利をもらうことができるので、有利なようにも思えます。けれども、おいしい話がタダで手に入るわけはありません。何かウラがあるはずです。このような正常な疑問は常に持ちたいところです。高い金利の引き換えとして、何かを渡しているはずです。
 具体的には、「円安・豪ドル高」になったときの利益です。500万円を単純に豪ドルの外貨預金に入れていて、〈ケース1〉のように、半年後に1豪ドル=105円になれば、元本だけで5,357,100円となります(51,020豪ドル×105円)。しかし、この債券では510万円しかもらえません。差額の約25万円を放棄することで、円高による損失を補っていると考えればよいでしょう(もっと円安になれば、もっと大きな利益を引き換えにすることになる)。

 ひとことで言えば、「うまい話なんてない」。それにつきます。損をすることを極端に恐れたり、目先の利益につられて、判断がゆがんでしまいそうになりますが、有利な商品がごろごろしているなんてことはないのです。そんな商品があれば、金融機関が自分で買い込んでしまうでしょうから。金融取引は、どのようなかたちをとっていたとしても、現時点の価値は等しいと考えるのが原則です(投資詐欺のような場合は除きます)。日本国債とノルウェー地方金融公社が発行するデュアル・カレンシー債は、いまの時点では同じ価値だということです。もちろん3年後の結果はわかりませんが、それは結果論というものです(将来のことを考えるのに、結果論は何の意味も持ちません)。

 いわれてみれば当たり前の話ですが、みなさんなかなか気づきません。金融機関としても、気づかれてしまうと困るという事情もあります。だって、もしみんなが知ったら、商品が売れなくなってしまいますからね。もちろん、金融機関の人でも、この当たり前のことを知らない人のほうがはるかに多いと思いますが(勉強してほしい)。

 加工度の高い食品は、見た目もよく、味も濃くできているので魅力的です。でも、体にはよくありません。慣れてしまうと、どんどん味付けも濃くなっていきます。そのことに気づいた人たちは、どんどん自然食に戻ってきています。素材を生かして、薄味で食べることにより、健康にもプラスの影響を与えます。金融商品だって同じです。いろいろな条件をつけて加工した商品は使いにくいのです。わかりにくい商品はできるだけ避けるべきでしょう。具体的には、預金、株式、債券、投資信託といったオーソドックスな(自然な)商品を活用することを考えるのが基本です。

■ 複雑な商品は避けたほうがよい理由

 「金融取引は、どのようなかたちをとっていても、現時点の価値は等しい」と指摘しました。この言葉をそのまま受け取ると、「それじゃ、どんな取引をしてもいいんだ」ということになります。原則としては「その通り」といっていいのですが、やはり複雑な金融商品(加工度の高い商品)は避けたほうがよいと思います。理由は2つあります。

 第1の理由は、「複雑な商品ほど、金融機関に有利に条件が決定されるから」です。デュアル・カレンシー債券の例をみればわかるように、複雑な金融商品の場合、どこにメリットがあり、どこにリスクがあるのかがわかりにくくなっています。私たち素人には、どういう条件を満たしたときに、どれだけのメリットがあるかが見えにくいのです。そしてその条件は金融機関の都合で決められます。「円高・豪ドル安」なら、運用を続けてもらって、高い金利をもらい続けたいのですが、この債券は途中で戻ってきてしまいます。金融機関とって、おいしくないからです。
 私たち庶民が、金融商品を開発している人たちと同じレベルの知識を持つことは、ほとんど不可能です。「情報格差」は現実に存在します。「情報格差」を埋めようとしない金融機関に問題があることはたしかですが、私たちも自己防衛をしなくてはいけません。すぐにできる自己防衛は「複雑な商品は買わないこと」です。
 
 第2の理由は、「複雑な商品ほど、判断に影響を与えやすいから」です。何か商品を購入した後で、自分に合っていないと気づいたらどうしますか?ふつうなら使うのをやめたり、別のものに交換したりするはずです。基本的には金融商品も同じです。自分にあっていないと感じたら、すぐに見直すのが原則です。しかし、商品が複雑になっていると、途中でやめたくてもやめられないということもあります。思ったより損失が大きくなっていて、「もう少し続けたほうがいいかな」などと思ってしまうのです。普通の債券であれば、好きなときに処分できるのに、デュアル・カレンシー債だからなかなかうまくいかないということもあるでしょう。
 大切なことは、「すぐに動けるようにしておくこと」です。専門用語では、「流動性を高めておく」といいます。自由な判断を商品が妨げてしまうというようなことがないように注意しましょう。
 
 さて、今回は債券を取り上げましたが、複雑な商品というのは他にもたくさんあります。保険料を安くするために、途中での解約に制限が加えられている保険などもその一例です。運用がいいときは年金額が増えるけれど、運用が悪いときにも一定の保証があるという「変額年金保険」もそうですね(そんなうまい話あるわけないじゃん)。シンプルな商品ではなかなか売れないので、商品がどんどん複雑化する傾向にあります。

(今日の結論) 
 なにごともシンプルが一番。自然な生活を心がけましょう。

(関連図書) 
 興味がある人は、こんな本も読んでみてください。著者の意見に同意できない部分もありますが、勉強になる部分もたくさんあります。ちょっと難しいかも知れませんが、「情報格差」を解消するには、勉強するしかありません。 

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2008年8月25日 (月)

「よい保険」と「悪い保険」は見分けられるのか?

■「よい保険」と「悪い保険」って何?
 
 「この保険は、いい保険ですね。」「この保険は、ちょっと問題がありますね。」 生命保険のセールスを始めたころ、会社で受けた研修内容を鵜呑みにして、そんなセリフを連発していました。もちろん、「よい保険」はあまりなくて、「悪い保険」のほうが多くなります。だって、自分の取り扱う保険に入ってもらいたいから。何とかして、問題点を見つけ出そうと努力していました。いやらしい話です。お客様のためというよりも、自分のためのセールスです。いま振り返ると、本当に恥ずかしく思います。 
 残念なことではありますが、まだ 「よい保険」「悪い保険」といったかたちで、保険を区別するという傾向は残っているようです。週刊ダイヤモンドや週刊東洋経済では、毎年必ず「保険商品ランキング」を掲載しています。セールスの現場でも、「この保険はいい」「これは悪い」という会話がまだまだ続いています。あなたも聞いた経験があるかも知れません。
 「よい保険」は、貯蓄型の保険をさすことが多いようです。具体的には「終身保険」や「養老保険」が該当します。この場合、「悪い保険」は、掛け捨て型の保険になります。具体的には「定期保険」が該当します。人によっては、「よい保険=掛け捨て型」「悪い保険=貯蓄型」というように反対の主張をすることもあります。
 本当のところは、どうなのでしょうか?「貯蓄型」と「掛け捨て型」のどちらがよいのでしょうか。人によって言うこと違うというのも、困りますね。あなたが保険を検討するにあたって、A社は「貯蓄型の保険がよい」と言い、B社は「掛け捨て型の保険がよい」というのでは、困ってしまいます。保険だけで考えてもなかなかよい考えは浮かばないので、保険以外の商品やサービスでは、商品の「よい」「悪い」をどのように区別しているのかを考えてみることにしましょう。

■すべての商品は「よい商品」

 車を例にとります。「よい車」と「悪い車」は、どうやって区別しますか?「よい車」のイメージは、人によって違いますね。「悪い車」は、なんとなくわかります。運転している最中に、火が出てくるような危険な車は、「悪い車」です。また、乗り心地がよいといっていたのに、実際にはガタガタしちゃう車も「悪い車」です。このように、安全性に欠けていたり、誇大または虚偽の表示が行われているときは、「悪い車」といえるでしょう。
 常識的に考えて、自動車メーカーは、こんな車を売りません。自分たちの評判を落とすだけですから。もちろん、最初は安全だと思って作った車に、あとで欠陥が見つかるということはあります。しかし、その場合もすぐに修理や交換をしてくれます。誰が見ても明らか「悪い車」というのは、そうそうお目にかかることはできません。
 車を「よい車」と「悪い車」に区別できるとしたら、「悪い車」はほとんどないわけですから、世の中に出回っている車は、「よい車」ばかりです。ここでの「よい」は、「悪くない」というのと同じ意味です。つまり、すべての車が「よい車」ということになります。あとは好みの問題です。赤い車が好きなのか、ゴールドの車が好きなのか、それは個人の勝手です。ダンプカーなのか、スポーツカーなのかも同じです。ダンプが悪くて、ポルシェがよいとはいえません。客観的に「よい」とはいえないのです。「よい」か「悪い」かは、ひとりひとりが決めることです。
 これは、車に限らず、すべての商品やサービスにあてはまります。住宅でもマンションがよくて、一戸建てが悪いということはありません。持ち家がよくて、賃貸が悪いということでもありません。どの部分に価値を見出すかは、人によって大きく異なります。もちろん、生命保険の場合も、同じです。「悪い保険」というものは、ありません。最低限の基準をクリアしているという意味では、すべての保険が「よい保険」といえます。
 「この保険はいい」とか、「この保険は悪い」と話すセールスパーソンは、自分が保険の良し悪しを決められると思っているのでしょう。神様ですね。私にはとてもできません。

■質問の立て方を変えてみよう

 何事でも、「よい」「悪い」と、単純に分けることができたら、どんなに楽でしょう。でも、もしそんなことになったら、みんな同じ商品やサービスを選ぶことになってしまいます。ありえない話です。自分にあった商品やサービスは自分で見つけるしかありません。ちょっと大変だけど、楽しいことでもあります。自分はどんなものを好きなのか、どんなものは嫌いなのかを発見することになるからです。では、自分にあった保険を見つけるには、どうしたらよいのでしょうか?
 具体的な方法については、このブログなどで、さまざまな形で紹介していきたいと思います。今回は、ひとつ重要なポイントを教えます。それは「質問によって答えは変わる」ということです。4行前に、「自分にあった保険を見つけるには、どうしたらよいのでしょうか?」と書きました。この質問に答えるために、あなたならどうしますか?ネットや雑誌で生命保険に関する情報を集めて、その中で自分にあった保険を探そうとするのではないでしょうか?たぶん、行き着く先は「保険料の安い生命保険」になるでしょう。ネット経由の生命保険や共済というところですかね。もちろん、それでも悪いとは思いません。でも、それで本当にいいのでしょうか?あなたが求めているのは、保険料の安い保険なのでしょうか。
 そこで、質問を変えてみましょう。そのとき大事なことは、テーマを少しずらすことです。保険のことを保険の中だけで考えていると、狭い範囲でしか答えがでません。そこで、保険から少しテーマを広げてみることにしましょう。私だったら、こんな質問を立てます。
 「私がこれからの人生を楽しむために、保険を含めた金融商品をどのように有効活用したらよいのだろうか?」
 これなら答えは、かなり広がりそうです。解決策は保険でなくてもよいことになります。そして、答えの質もより高いものになることが期待できます。頭の体操だと思って、この質問に対する答えを考えてみてください。もちろん、私は結論を持っています。でも、大切なことは、その結論を知ることではありません。自分の頭できちんと考えることです。ちょっと難しい課題かもしれませんが、頑張ってみてください。いいアイディアが浮かんだら、教えてくださいね。

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2008年8月23日 (土)

生命保険会社のCMから見える裏事情(下)

■ 敵を知り、己を知れば百戦危うからず

 生命保険会社は「守りの姿勢」に入っています。お客さんを増やすことよりも、お客さんを減らさないことが大事にしているのが現在の姿です。生命保険の契約期間は長いので、お客さんが契約を続けてくれれば、会社にはずっとお金が入ってきます。収入を増やすのが難しいときには、なんとか減らさないよう努力をしているというわけです。

 もちろん、このようなことをずっと続けているわけにはいきません。お客さんが増えずに時間が経過していけば、生命保険の契約は確実に減っていきます。人間には寿命がありますから。お客さんが契約を解約しないにしても、お亡くなりになってしまえば、契約は消えてしまいます。日本の人口は減少しはじめているので、これから生命保険会社が何も手を打たないと、契約が減少するスピードが早くなることは確実です。そのための対策として、海外進出や資産運用ビジネスへの進出といったことが考えられますが、これは今回のテーマではありません。今回は、生命保険会社が「守りの姿勢」をとりながら、どのようにして稼ごうとしているのかを知ることが、私たちの課題です。生保の稼ぎ方を知ることで、生命保険選びに役立てようというわけです。

 「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」(孫子)という言葉があります。私たちは生命保険会社と戦争をしているわけではありませんが、相手のことをよく知ることは大切です。生命保険を含めた金融商品では、売り手と買い手の間に、「情報の格差」が生じます。そして、「情報の格差」は、必ず売り手である金融機関に有利に活用されます。だから、金融機関と対等につき合うために、金融機関が何を考えているのかについて、よく知る必要があるのです。「金融機関を疑え!」と言いたいわけではないのですが(私も金融に携わる人間なので)、お人よしではいけません。恋人同士だって、夫婦だって、友達同士だって、対等の関係でいるためには、どちらかに依存しすぎないことが大事です。

■生命保険のセールスは、車のセールスに似ている

 生命保険の契約期間が長いことは、すでにお話しました。それでは、生命保険会社からみて、一度お客さんと契約を結べば、あとは何もしないでもよいということなのでしょうか?もちろんそんなことはありません。初めての契約は、お客さんが若いときでしょうから、掛け金もそれほど多くはありません。結婚して、子どもができるたびに、新しい保険を追加してもらうことになるのが普通です。このように、掛け金を増やしていってもらうのが、セールスパーソンの腕の見せどころです。

生命保険のセールスは、車のセールスに似ています。

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2008年8月22日 (金)

生命保険会社のCMから見える裏事情(中)

「生命保険会社は、なぜ効果がよくわからない不思議なCMを大量に流しているのだろう?」
その疑問に答えるために、まず、このようなCMは誰のために流しているのかについて考えてみることにしましょう。

■生命保険会社のCMは「アリバイづくり」である
保険料の安さを強調するCMを流している会社は除いて、生命保険会社のCMは、CMを見た人に行動を促す内容にはなっていません。CMを見て、「保険の内容を見直そうかな」とか、「保険に入ろうかな」なんて思う人は、日本全国を探してもほとんどいないでしょう。もちろん、こんなCMを流したところで、保険の売り上げが上がるなんてことはないと、生命保険会社も自覚しています。もし保険の契約を増やしたいなら、アリコジャパンがやっているように、フリーダイヤルの電話番号やホームページのURLを連呼するはずですから。
だから、生命保険会社のベクトルは外にではなく、内側に向かっていると考えるのが自然です。お客さんに対してメッセージを発信しているというよりも、内輪に向けて「アリバイづくり」をしているのです。「アリバイ」というのは、「私たちはお客さまのために誠心誠意努力していますよ」とか、「家族の愛を形で示す仕事をしているんですよ」というポーズづくりと考えればよいでしょう。
最近では、保険金不払いが話題になり、保険会社に対する風当たりは強くなっています。「保険会社は保険金を払うのが最重要の仕事なのに、払うべき保険金を払わないのは何事だ。」という声が聞こえてきます。たしかに、お客さんのことなんて考えてなかったといわれても仕方がありません。だから、保険会社は世間に対して反省のポーズをとる必要に迫られているのです。

「世間」という言葉を使いましたが、この「世間」の代表が「金融庁」です。金融庁ににらまれると大変です。最悪の場合は、業務停止だってあります。したがって、生命保険会社は十分に反省しているという気持ちを示すために、CMを流しているというわけです。「すべてのお客様を訪問して、保険の内容を確認しています」という活動も、その流れの延長線上にあることがわかります。

生命保険会社のCMは、世間(特に金融庁)に向けての「アリバイづくり」なのです。

■見返りは「減らさないこと」

CMが「アリバイづくり」だとしても、その見返りはなんでしょう。アリバイづくりのためだけに、多額の予算を使うというのは、馬鹿げています。アリバイづくりだけなら、CM以外にも方法はあるでしょうから。生命保険会社もそれなりの見返りがあると考えているからこそ、CMにお金をかけるはずです。では、その「見返り」とはいったい何なのでしょう?

お客さんが増え、収入(保険の掛け金)が増えてくるというのが、いちばんわかりやすい見返りです。ただ、すでに何度も指摘しているように、生命保険会社は売り上げを伸ばそうとはしていません。特に、昔からある伝統的な保険会社(日本生命や第一生命など。漢字生保とか日本社もいう)にその傾向が強いようです。彼らは何を狙っているのでしょうか?

その答えは簡単です。漢字生保は、「新しく増やせなくても、減らさなければよい」と考えています。お客さんが増えなくても、大きく減らさなければ、とりあえずやっていけるからです。これが保険の面白いところでもあり、いやらしいところでもあります。

生命保険の掛け金の払い込み期間は、通常、かなり長期にわたります。20年、30年続けて掛け金を払うというのは珍しいことでありません。一生払い込む(終身タイプ)などというものもあります。保険会社には、途中で契約がなくならないかぎり、長期間にわたってお金が入ってきます。なかなかおいしい商売ですね。

だから、生命保険会社がもっとも怖れることは、すでに契約しているお客さんが保険をやめてしまうことです。それを防ぐために、誠心誠意お客さんのことを思って活動しているというポーズをとる必要があります。この「アリバイづくり」によって、お客さんがこれまで通り契約を続けてくれれば、これからも掛け金が入ってきます。保険会社にとっては厳しい時期ですから、収入が減らないだけでも万々歳です。

つまり、このCMの「見返り」は「お客さんを逃がさないことによる掛け金収入」です。生命保険会社(特に漢字生保)は守りの姿勢に入っています。拡大よりも、現状維持を重視するという傾向が強いのです。

以上、見慣れたCMから、生命保険会社が何を考えているのかがわかりました。これからは、ちょっと違った視点でながめて見るのもよいか知れません。

さて、ここまでで生命保険会社の考え方がわかりました。今度はその知恵を私たちの生活に活用しましょう。生命保険会社が守りの姿勢に入っていることは、私たちの生命保険選びにどのように関係するのでしょうか。たぶん、生命保険のしくみはなかなかよくできていると感心することになると思います(もちろん、皮肉も込められてます)。

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2008年8月21日 (木)

生命保険会社のCMから見える裏事情(上)

最近、生命保険のCMを見たことがありますか?

あまり注意して見ている人は少ないかも知れませんね。

じっくり見ていると、生命保険会社のCMは大きく4つのタイプに分けることができます。
①保険料の安さを強調するCM

 代表例は、「てごろでがっちり入院保険」といったユニークなネーミングで、保険の安さを強調するアリコ・ジャパンです(動画はこちら→http://www.alicojapan.com/CM/)。

②親しみの持てるイメージCM

 あひるちゃん(ナンバー1ダック)を使ったアメリカン・ファミリーのCMは見たことがあるでしょう。宮崎あおいさんとのコンビが活躍しています(動画はこちら→http://www.aflac.co.jp/duck/cm/index.html)。

③セールスパーソンの想いを表現したCM

 実際のセールスパーソン(女性の場合が多い)や女優を起用して、生命保険を通じたお客様とのつながりの重要性を強調します。いまCMの中で一番多いタイプです。保険金不払いの問題があったからなのかな?(住友生命の動画はこちら→http://cam.sumitomolife.co.jp/2008cm/index.html)。

④家族への愛を強調したCM

 病気をしたり、家族に不幸があった人が、「保険はいかに役に立つのか」を語ります。俳優にインタビューして、「家族への愛」を語ってもらうのもこのパターンです(日本生命CMでは江口洋介が語っている。動画はこちら→http://www.nissay.co.jp/okofficial/kojin/present/cm/hokenheno/index.html)。
この4つのタイプを見て、不思議に感じることはありませんか?
どうでしょう?

企業はCMを何のために作るのかを考えてみれば、生命保険のCMがいかに不思議であるのかがわかります。
そもそも、企業CMの目的は、商品やサービスを紹介したり、お店に足を運んでもらったり、申込みをしてもらったりするためでしょ。
イメージ広告や政府広報といったお金の無駄遣いをしているとしか思えないCMもたまにありますが、広告宣伝の基本は「商品やサービスの紹介」「来店や申込みの誘い」ですね。
では、生保のCMをもう一度振り返って見ましょう。商品やサービスを紹介しているでしょうか?来店や申込みの誘いをしているでしょうか?
4つのタイプのうち、商品の紹介をしているのは、①の「保険料の安さを強調するCM」だけです。あとの3つは具体的な紹介はしていません。では、この3つのタイプのCMは「お店に来てください」「申込の手続きをしてください」と誘っているでしょうか?う~ん。CMを見た人に何か具体的な行動を求めているわけではなさそうです(そもそも保険会社のオフィスに来店する人は少ないのですが)。
ナンバー1ダックは欲しいけど、それだけでアメリカン・ファミリーの「がん保険」に入りますか?セールスレディの仕事ぶりに感心したとしても、それで保険に入りたくなるわけでもないし(それで保険に入る人が出てきたらすごいことだとは思うけど)。江口洋介が家族への愛を語っても、「ふ~ん。それで。」という感じです(森高千里は好きだけど)。
要するに、②~④のCMは、何が言いたいのかよくわからないんです。商品の紹介をするわけでもなく、CMを見た人が行動に移りたくなるようなしかけもない。不思議なCMです。
でも、こんな疑問が出てくるかも知れません。
「なぜお金をかけて、そんな不思議なCMを流しているのだろう?」
あなたは鋭い!本当にそうですね。
なぜ、このように効果があるのかないのかわからないCMに広告宣伝費をつぎ込むことができるのでしょうか?生命保険会社も利益を追求しているので、無駄な金を使うことはありません。意見するとお金の無駄遣いにしか見えないCMでも、出している必ず理由があるはずです。
答えは次回紹介するとして、今回は考えるヒントを2つ差し上げておきましょう。

1.生命保険会社は、誰のためにCMを出しているのか?
 生命保険会社が、商品やサービスをすすめないということは、新しいお客さんを積極的に増やそうという意欲が低いということです。ということは、②~④のCMは不特定多数の人に向けられているわけではなさそうです。では、このCMは誰に向けて作られたのでしょうか?(深読みすればいろいろな答えが考えられそうですね。)
2.CMの「見返り」とは、何だろうか?
 CMを含めた広告宣伝をする以上は、「見返り」がないと困ります。見返りがないと、お金をドブに捨てたことになってしまいますから。では、「見返り」は何でしょう。生命保険会社は、お客さんを増やさないで、どういう「見返り」を得ようとしているのでしょう?

生命保険会社が何を考えているのかを知りたい人は、次回も読んでみてくださいね。
あなたの生命保険を考えるときの参考にもなりますよ。

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2007年6月15日 (金)

知らぬが仏

私は、FP業務のかたわら、投資信託も扱っている。

率直にいって、「投資信託は難しい」と思う。「難しい」という意味は、投資信託のしくみが難しいという意味ではなく、その使い方が難しいという意味だ。投資信託は、株や債券の集合体なので、株そのもの、債券そのものを買うよりも、値動きが小さくなるという効果がある。たしかにそれはメリットではあるが、値動きをなくしてしまうことはできない。その意味では、株や債券と大きな違いはない。

値動きの影響を回避するために、投資信託を一度買ったら長く保有することが推薦されている。このこと自体には間違いはないのだが、ずっと値下がりしているときにも持ち続けられるのだろうか。理屈では長くもったほうがよいのかもしれないが、実際に毎日値段が下がっている資産を保有できるのか。それは経験したものでないとわからない感情であり、また一度経験したら、普通の人なら二度目はごめんこうむりたい経験だろう。

資産運用のプロであれば、合理的な根拠に基づいて「損切り」することができる。しかし、素人にはできない。なぜなら、プロと素人では資産運用に対する距離が違うからだ。プロはこれからもずっと資産運用を続けることが前提になっている。だから長い目で見て効果が高い選択をすることができる。素人はそこまで資産運用に対する思い入れはない。だから、値下がりした資産をなかなか処分できない。処分してしまうと損が確定するので、負けを認めることにもなり、なかなか踏み切れない。

将来上がる見込みのない資産を手放すというのは合理的な行動だが、素人の立場ではなかなかできることではない。それなら、何も考えずにじっと耐え続けよ、ということになるのかも知れないが、先が見えなければ、どこまで耐えればよいのかもわからない。こういう状況は、数年に一度ぐらいの確率で十分に起こりうる。

そのときどうすればよいのか?

現在、投資信託を売っている人も買っている人も、そのあたりのことを真剣に考えているとは思えない。必要以上にリスクを怖がることはないが、根拠もないのにリスクを無視するというのもいけない。いまの投信ブームは、本当の意味でのリスクを知らない人たちが作り上げているように思えてならない。

もっと良い方法があるのにね。

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2007年6月14日 (木)

資産運用の本が使えないわけ

秋に本を出版します。本のテーマは「時間も手間もかけずにできる資産運用の方法」。

今日、出版社で打ち合わせをしてきました。資産運用の本というと、運用のプロが書くのが一般的です。ところが私は資産運用を仕事にしたことがありません。なぜ、資産運用を仕事にしていない私が、資産運用の本を書くのでしょうか?

それは、運用のプロが書いたノウハウは素人には使えないからです。株にしろ、債券にしろ資産運用を仕事にしてきた人たちは、知識も経験もたくさんあります。私もいろいろなことを教えてもらいました。彼もしくは彼女たちのノウハウに価値があるのは明らかです。

そこで、そのノウハウをそのまま使うとうまくいくという前提で、本が出版されます。でも、実際にはあまり使えません。著者は噛み砕いて書いているつもりでも、素人には難しいし、大きなリスクをとらなければいけない内容になっていることが多いからです。プロと素人には大きなギャップがあります。プロのノウハウをそのまま素人に使うのは無理があります。

プロは仕事として資産運用をしているので、四六時中資産運用のことを考えることに慣れています。1日5時間考えているとしたら、週休2日でも週に25時間。年間にすれば1000時間以上を資産運用のために使うことができるでしょう。プロはそれが当たり前だと思っています。

素人の場合はどうでしょう。デイトレーダーは別にして、仕事を持っている人であれば、一日に1時間使うのも無理でしょう。極端かも知れませんが、1年に1時間以上資産運用のことを考えている人はそれほど多くはないでしょう。

1000時間と1時間。この差は大きい。1000時間を使うことを前提としたノウハウが、1時間しか使えない人に役立たないのは明らかです。ノウハウはそれを使いこなせる前提があってこそ、初めて意味のあるものになります。プロができるからといって、同じことを素人もできると考えるのは間違いです。イチローが自分の練習方法をすべて後悔したとしても、イチローと同じレベルになれるなんてことはないでしょう。すぐにわかることです。

素人に適した資産運用の方法論があるべきだ、というのが私の持論です。その方法論は、資産運用のプロには発想できません。現場でお客様と一緒になって考えてきた自分のような立場だから、ユニークな発想ができたと思っています。正直なところ、お客様は資産運用のことなど何も知りません。また資産運用に多くの時間を使いたいとも思っていません。そんな限られた条件の下でももそこそこの成果を上げる方法がないかといろいろ考えて、やっとまとめることができました。

あるお客様は、この4年で資産が倍になりました。でも、そのお客様は資産が倍になったことをたぶん知らないでしょう(笑)。つまり、値動きのことを全く意識しないまま、資産が倍になったのです。これって最高のパターンですね。私が連絡したらたぶんビックリするでしょう。もちろん今回はできすぎなので、いつもこんなにうまくいくわけはないのですけどね。

営業マンが書いた資産運用の本って、ちょっと変わっていると思いませんか?
売れてくれるといいんですけどね(発売予定は9月)。

年金の不安/撲滅委員会: http://www.nenkin-anshin.com/

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